「生命保険料控除って、いまいち仕組みがわからない」という声をよく聞きます。
今回は、所得税における生命保険料控除の基本を復習しつつ、2026年からスタートする子育て世帯向けの控除拡充についてわかりやすく整理していきましょう。
1. 「新制度」と「旧制度」を区別しよう
生命保険料控除とは、支払った保険料に応じて所得から一定額を差し引く制度です。所得税・住民税の負担を軽くする仕組みですね。
ただし注意が必要なのは、「新制度」と「旧制度」でルールが異なることです。
- 新制度(2012年1月1日以降の契約)
控除の種類:3種類(一般・介護医療・個人年金)
控除限度額:各4万円、合計12万円 - 旧制度(2011年12月31日以前の契約)
控除の種類:2種類(一般・個人年金)
控除限度額:各5万円、合計10万円
📘 ポイント
どちらの制度かは、毎年秋に届く「生命保険料控除証明書」で確認できます。
契約の更新・転換・特約追加をした場合は、新制度扱いになるケースもあります。
2. 対象となる保険契約の範囲
生命保険料控除の対象となるのは、保険の種類や条件によって異なります。
▶ 一般生命保険料控除・介護医療保険料控除
保険金受取人が契約者本人またはその配偶者・親族であることが必要です。
ただし、貯蓄性が高い短期の保険(5年未満)や団体信用生命保険などは対象外。
▶ 個人年金保険料控除
次の4条件をすべて満たす必要があります。
- 年金受取人が契約者本人またはその配偶者であること
- 年金受取人=被保険者本人
- 保険料払込期間が10年以上
- 年金受取開始が60歳以降で10年以上継続
この条件を満たす「個人年金保険料税制適格特約」付きの契約のみが対象です。
3. 新契約と旧契約が混在している場合の計算
もし、新旧両方の契約を持っている場合は、
①新制度の控除額、②旧制度の控除額、③その合計、のうちもっとも有利な金額を選べます。
ただし、控除額の上限にはルールがあります。
| 区分 | 控除限度額(所得税) |
|---|---|
| 新制度(一般・介護医療・個人年金) | 各4万円(合計12万円) |
| 旧制度(一般・個人年金) | 各5万円(合計10万円) |
| 新旧両方ある場合 | 最大12万円まで |
共済契約も控除対象に含まれますが、少額短期保険は対象外です。
4. 手続き方法 ― 年末調整 or 確定申告
▶ 給与所得者(会社員など)
勤務先に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に、
保険会社から届いた「生命保険料控除証明書」を添付します。
年末調整で控除が反映され、源泉徴収税額が減ります。
▶ 自営業者(フリーランスなど)
確定申告書に「生命保険料控除証明書」を添付し、控除を申請します。
e-Taxを利用すれば、電子的控除証明書データの提出や証明書の省略(5年間保存)も可能です。
なお、年末調整で控除を忘れても、確定申告で取り戻すことができます。
5. 2026年から始まる「子育て世帯向け」拡充
2024年12月に発表された令和7年度税制改正大綱では、
「子育て世帯の経済的負担を軽減する」ために、生命保険料控除が拡充されることになりました。
▶ 対象世帯
23歳未満の扶養親族がいる世帯(所得税ベース)
▶ 改正内容
新制度・旧制度いずれの一般生命保険料控除の上限を
4万円 → 6万円に引き上げ(図表4)。
📈 例)年間保険料5万円の場合
旧制度では控除額3万2,500円 → 改正後は4万円にアップ。
わずかですが、確実に節税効果があります。
ただし、全体の上限(12万円)自体は変わりません。
すでに満額使っている人には影響はない点に注意しましょう。
6. 改正を上手に活用するポイント
この制度をうまく活かすためのポイントは、加入時期と保険の種類選びです。
- 対象となるのは2026年1月1日~12月31日に支払った保険料。
→ 月払いなら、早めの契約が有利。
→ 半年払いや年払いも検討を。 - 新しい保険に加入しなくても、既存契約が対象なら控除額アップの恩恵を受けられる可能性があります。
🎯 子育て世帯におすすめの見直しタイミング
- 保障の見直しを予定している人
- 更新が近い定期保険・収入保障保険を持っている人
- 学資保険や変額保険を検討している人
今回の拡充は2026年限定の措置とされていますが、
今後の税制改正で継続・拡大される可能性もあります。
制度の動きを追いつつ、「必要な保障+節税」を両立させたいですね。
まとめ
- 生命保険料控除は「新制度」「旧制度」でルールが異なる
- 控除証明書で自分の契約を確認しよう
- 子育て世帯は2026年分から控除上限が4万円→6万円に拡充
- 全体上限は12万円のまま
- 加入・更新時期を意識すれば節税効果を最大化できる
💬 FP解説:
生命保険料控除は「保険のための税制優遇」ではなく、「生活を守る仕組みを支える税制」です。
子育て世帯の家計にとって、わずかな控除アップでも「安心を買う余裕」につながるかもしれません。
制度の仕組みを知り、将来の見直しに活かしていきましょう。
📘参考
FPジャーナル(2025年10月9日)
「【生命保険】生命保険料控除の基本と2026年改正のポイント(平野敦之氏)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

