iDeCoやNISAとの比較活用術
前置き
生命保険には「保障」と「税制優遇」という2つの顔があります。ただし、税金の軽減効果だけを目的とするなら、実はもっと効率の良い制度が存在します。それが iDeCo(個人型確定拠出年金) と NISA(少額投資非課税制度) です。今回はこれらとの比較を通して、生命保険をどのように位置づければよいのかを整理してみましょう。
1. iDeCoの特徴
- 掛金が全額所得控除
毎年の拠出額すべてが所得控除の対象になります。 - 運用益も非課税
通常は課税される運用益も非課税で再投資可能。 - 受け取り時も優遇あり
一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除を活用できる。
例)所得税率33%の人が年間24万円拠出すると、約8万円の節税効果。生命保険料控除の最大効果(4万円控除×33%=約1.3万円節税)を大きく上回ります。
2. NISAの特徴
- 投資による運用益が非課税
通常20.315%かかる譲渡益・配当税がゼロに。 - いつでも引き出し可能
iDeCoと違い、原則自由に資金を引き出せる。 - 長期的な資産形成に適する
特につみたてNISAでは投資信託を20年非課税で保有できる。
NISAは「節税」というよりも「資産形成を効率化する制度」として位置づけられます。
3. 生命保険料控除の位置づけ
一方で生命保険の節税効果は、年間8万円の保険料で最大でも所得税4万円+住民税2.8万円の控除にとどまります。
つまり、税制優遇だけを狙うなら、iDeCoやNISAの方が圧倒的に有利です。
では生命保険のメリットは何かというと、
- 万が一の保障がついている
- 途中解約して現金化できる商品もある
といった「保障と流動性の両立」にあります。
4. 活用の優先順位
FP・税理士の立場から考えると、次のような優先順位で検討すると無駄がありません。
- iDeCo(節税効果が大きく、老後資金づくりに直結)
- NISA(運用益非課税で資産形成効率UP)
- 生命保険料控除(上限が小さいため最後に調整的に活用)
つまり、まずiDeCoとNISAをフル活用し、それでも余裕資金があり、かつ保障も必要なら生命保険を追加する、という流れが理想的です。
5. ケース別の考え方
- 独立したばかりの個人事業主
まずは生活費・事業資金の確保が優先。保障は最低限にしつつ、余裕があればiDeCoから始める。 - 会社員で安定収入あり
給与天引きのiDeCoが使いやすい。NISAも併用し、生命保険は家族の保障ニーズに応じて調整。 - 高所得で資金に余裕あり
iDeCo・NISAをフル活用したうえで、控除枠を埋める意味で生命保険料控除を活用すると効率的。
まとめ
生命保険はあくまで「保障」がメインであり、節税は副次的な効果です。
一方で、iDeCoやNISAは「資産形成+税制優遇」に直結する強力な制度。
したがって、
- iDeCo
- NISA
- 生命保険
という順番で検討し、最後に生命保険で不足する保障や控除枠を補う、という考え方が現実的です。
👉 次回(第5回)は、「商品選びと解約リスク」をテーマに、シンプルな保険の選び方や解約返戻金の注意点について解説していきます。
(参考 2025年9月13日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
