生命保険と税金のかしこい付き合い方(第3回)

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生命保険料控除の実務と注意点

生命保険のメリットのひとつに「生命保険料控除」があります。保険料を支払うことで所得税や住民税を軽減できる仕組みですが、控除額には上限があり、仕組みを正しく理解していないと「思ったより節税できなかった」ということになりかねません。今回は、控除の仕組みと実務で注意すべきポイントを整理します。


1. 生命保険料控除の3つの区分

生命保険料控除は契約の種類によって3つに分かれます。

  1. 一般生命保険料控除(死亡保険など)
  2. 個人年金保険料控除(個人年金保険)
  3. 介護医療保険料控除(医療保険・介護保険など)

それぞれ独立して適用できるため、複数の商品に加入していれば3種類すべての控除を受けることも可能です。


2. 控除額の上限

2012年以降に契約した保険の場合、所得税の控除額は以下のとおりです。

  • 年間保険料が 2万円以下 → 全額控除
  • 年間保険料が 2万円超〜4万円以下 → 保険料の1/2+1万円
  • 年間保険料が 4万円超〜8万円以下 → 保険料の1/4+2万円
  • 年間保険料が 8万円超 → 控除額は一律 4万円

住民税は最大で2.8万円が控除上限です。

つまり、1区分につき年間8万円の保険料を払えば、所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円の控除を受けられる計算になります。


3. 節税額のイメージ

節税額は「控除額 × 所得税率」で算出します。

例)課税所得1,000万円、所得税率33%の方が、一般生命保険料で最大控除(4万円)を受ける場合
➡ 4万円 × 33% = 1万3,200円の節税

所得が高いほど節税効果は大きくなる点がポイントです。


4. 実務上の注意点

  • 払い方による違い
     月払・年払なら毎年控除が受けられる。一時払いだとその年だけが対象。
  • 全期前納払いの活用
     保険料を一括で前納することで割引を受けつつ、毎年控除を適用できるケースがあります。
  • 旧制度の契約
     2011年以前の契約は旧制度(上限5万円)で計算されるため、新旧契約が混在している人は注意。
  • 控除証明書の提出
     毎年秋に保険会社から届く「生命保険料控除証明書」を必ず年末調整や確定申告に添付する必要があります。

5. FP・税理士からのアドバイス

生命保険料控除は「ついでの節税」くらいに考えるのが基本です。なぜなら、年間8万円の保険料で最大でも所得税4万円+住民税2.8万円の控除にしかならないからです。

  • 家計に余裕がある高所得者 → 控除上限まで活用すると効率的
  • 収入が限られる世帯 → 無理に保険料を増やすと負担が大きく逆効果

大切なのは、あくまで保障が主目的であり、節税は副次的な効果であるという視点です。


まとめ

生命保険料控除は、加入しているだけで得られる手軽な節税策ですが、上限額があるため過度な期待は禁物です。控除額を最大化するなら「年間8万円程度」に保険料を調整し、証明書を忘れずに提出すること。

無理なく払い続けられる範囲で、保障と節税の両方をバランスよく確保することが、生命保険との上手な付き合い方といえるでしょう。


👉 次回(第4回)は、iDeCoやNISAとの比較活用術について掘り下げます。生命保険をどう位置づければよいのか、制度の優先順位を整理していきます。


(参考 2025年9月13日付日経新聞朝刊)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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