特定生産性向上設備等投資促進税制とは何か――2026年度税制改正・法人課税の注目点①

税理士
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2026年度税制改正における法人課税の中で、最も大きな柱の一つが「特定生産性向上設備等投資促進税制」の創設です。
本制度は、国内における高付加価値型の設備投資を強力に後押しすることを目的としており、危機管理投資や成長投資を通じて「強い経済」を実現するという政策メッセージが色濃く反映されています。

本稿では、この新税制の制度概要、適用要件、実務上の注意点を整理し、企業にとってどのような意味を持つ制度なのかを考えていきます。

制度創設の背景

税制改正大綱の冒頭では、新たな付加価値の創出と生産性向上による成果が賃上げにつながり、その好循環を海外市場と結び付けることの重要性が強調されています。
単なる設備更新ではなく、「高付加価値化」「生産性向上」「国内投資」という三つの要素を満たす投資を、税制面から強く誘導する狙いが読み取れます。

その中核となるのが、産業競争力強化法の改正を前提に創設される本税制です。

制度の基本的な仕組み

本制度は、青色申告書を提出する法人が、一定の要件を満たす「特定生産性向上設備等」を取得し、国内事業に供した場合に適用されます。

対象となる設備は、生産等設備を構成する以下の資産です。
・機械装置
・工具および器具備品
・ソフトウエア等

一定規模以上の取得が要件とされており、具体的には次の基準が示されています。
・機械装置:1台または1基あたり取得価額160万円以上
・ソフトウエア:一の取得価額70万円以上

これらの設備について、取得後に国内の事業の用(貸付用を除く)に供した場合、税務上の優遇措置が認められます。

特別償却と税額控除の選択

本税制の最大の特徴は、次の二つの優遇措置を選択適用できる点です。

第一に、特別償却(即時償却)です。
普通償却限度額と合わせて、取得価額全額までを初年度に償却することが可能となります。投資初年度の課税所得を大きく圧縮できる点が特徴です。

第二に、税額控除です。
原則として取得価額の7%(建物、建物附属設備および構築物については4%)を法人税額から控除できます。ただし、当期法人税額の20%が控除上限とされており、控除しきれない金額については3年間の繰越控除が認められます。

適用の前提となる投資計画要件

本制度は、広く一般的な設備投資を対象とするものではありません。
特定生産性向上設備等と認められるためには、事前に策定する投資計画について、厳格な要件が設けられています。

主な要件は次のとおりです。
・投資計画に記載された生産性向上設備等の取得価額合計が35億円以上
 (中小企業者等については5億円以上)
・年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれること
・投資計画について経済産業省の確認を受けていること

さらに、確認を受けた日から5年以内に設備を取得し、事業の用に供する必要があります。

他の設備投資税制との関係

実務上、特に注意が必要なのが他制度との併用制限です。
本税制の適用を受ける場合、投資計画期間中は以下の設備投資税制を適用できません。
・地域未来投資促進税制
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 など

税制上のメリットが大きい一方で、選択を誤ると不利になる可能性もあります。複数の投資計画が並行する企業では、制度間の比較検討が不可欠です。

結論

特定生産性向上設備等投資促進税制は、規模・収益性ともに高い水準の投資を行う企業に対し、強力な税務インセンティブを与える制度です。
即時償却または税額控除という大胆な措置は、政策的に「選ばれた投資」を後押しする姿勢を明確に示しています。

一方で、適用要件は厳格であり、他の設備投資税制との排他関係も存在します。制度の活用には、税務だけでなく事業計画全体を見据えた慎重な判断が求められます。
2026年度以降の法人税実務において、本税制は投資戦略と税務戦略を一体で考える象徴的な制度になるといえるでしょう。

参考

・2026年度税制改正大綱
・税のしるべ(2026年1月5日)
・産業競争力強化法改正の概要(公表資料)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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