これまでの第1回・第2回では、経済学者の調査結果をもとに
- 給付付き税額控除の導入議論
- 物価高の持続と金融政策の行方
を見てきました。
今回は最終回として、これらの議論が 私たちの暮らしや投資にどう関わるのか、そして「いま何を準備しておくべきか」を整理します。
1. 生活者にとってのインパクト
(1)生活費の上昇
- 食料やエネルギー価格の高止まりは続く可能性が高い
- 賃上げが進んでも、実質的な購買力が目減りするリスク
家計簿をつけて支出の「固定費(住居・通信・保険)」を定期的に見直すことが、インフレ時代にはより重要です。
(2)税制改革による再分配
- 給付付き税額控除が導入されれば、低所得層や子育て世帯への支援が拡充
- ただし制度が複雑になると「自分が対象か分からない」「申請が面倒」という声が出る可能性
生活者にとって大切なのは、制度を正しく理解して確実に利用すること。税制や給付の情報をキャッチアップできるようにしておきましょう。
2. 住宅ローン・金利への影響
日銀が追加利上げに踏み切れば、まず影響を受けるのは住宅ローンです。
- 変動金利型ローンは返済額が増加するリスク
- 固定金利型ローンは当面の安心感があるが、金利水準はすでに上昇傾向
対応のヒント
- 変動金利で借りている人は、今のうちに「繰り上げ返済」や「固定化」を検討
- これから住宅購入を考える人は、「金利が上昇する前提」で資金計画を立てる
若い世帯にとって住宅取得のハードルは一層高まる可能性があり、ライフプラン全体での検討が不可欠です。
3. 投資・資産運用への示唆
インフレ環境下では、現金の実質価値が下がりやすくなります。
(1)インフレに強い資産
- 株式やREIT(不動産投資信託)はインフレ局面で価格が上がりやすい
- コモディティ(金や原油関連資産)は「安全資産」として人気が高まる
(2)分散投資の重要性
全世界株式インデックスなどを通じて、通貨や地域を分散させることも効果的です。
特にドル高・円安が進む局面では、海外資産への投資が為替分散にもつながります。
(3)NISA・iDeCoの活用
- 新NISAでは投資枠が拡大し、長期的な資産形成に有利
- iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を積み立てられる
- 将来的に「給付付き税額控除」などの再分配政策と併用することで、より安心なライフプラン設計が可能に
4. 企業・自営業者にとっての意味
物価高と税制改革は、企業や個人事業主にも大きな影響を与えます。
- 仕入れコスト増加:価格転嫁できるかどうかが収益を左右
- 人手不足と賃上げ圧力:従業員を抱える企業は人件費対策が急務
- 給付付き税額控除の導入:低所得層を対象とした支援策として、消費需要の底支えにつながる可能性
中小企業経営者やフリーランスにとっても、「政策が自分の顧客にどう作用するか」を見極めることが重要です。
5. 私たちができる備え
ここまでの議論を踏まえると、私たちが取れる備えは次の3つです。
- 家計の固定費を見直す
通信費・保険料・住宅ローンの3大固定費を中心に、インフレ時代に耐えられる家計を作る。 - インフレを前提に資産を分散する
株式・債券・不動産・コモディティをバランスよく組み合わせる。 - 税制や給付制度を正しく利用する
NISA・iDeCo・控除制度を最大限に活用しつつ、今後導入される新しい制度(給付付き税額控除など)を積極的に取り込む。
おわりに
エコノミクスパネル調査は、専門家の声を通じて「これからの経済と政策の方向性」を示してくれます。
- 税制面では、再分配を重視した新しい仕組みの検討が進む
- 物価面では、人手不足と賃上げを背景にインフレが続く可能性が高い
- 金融政策は利上げをめぐって慎重な判断が求められる
こうした環境を踏まえ、私たちは「変化を前提に暮らしと資産を設計する」ことが大切です。
次にやってくる制度改革や経済環境の変化に備えて、日々の家計・投資・仕事の選択をアップデートしていきましょう。
(参考:日本経済新聞 2025年9月30日付「エコノミクスパネル」記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
