衆院選を前に、「食品の消費税をゼロにする」という公約が注目を集めています。
議論の中では「免税にするのか、非課税にするのか」という言葉が使われますが、消費者にとってはいずれも支払う消費税がゼロになるため、違いが分かりにくいのが実情です。
しかし、事業者の立場から見ると、この二つはまったく異なる制度です。
消費税の申告・納税、仕入税額控除、還付、さらには資金繰りにまで影響が及びます。
本記事では、「免税」と「非課税」の制度的な違いを整理し、実務上どこに差が生じるのかを解説します。
免税とは何か
免税とは、消費税の税率をゼロ%に設定した課税取引です。
あくまで「課税取引の一種」である点が重要です。
免税取引では、次のような扱いになります。
- 売上に消費税はかからない
- 仕入や経費で支払った消費税は「仕入税額控除」の対象になる
- 仕入税額が売上にかかる消費税を上回れば、還付を受けられる
代表例が輸出取引です。
海外に商品を販売しても消費税は請求できませんが、国内で仕入れた原材料等に含まれる消費税は、申告により還付されます。
つまり免税は、「消費者に税を転嫁しないが、事業者の負担は残さない」仕組みだといえます。
非課税とは何か
一方、非課税はそもそも消費税制度の対象外とされる取引です。
課税・免税という枠組みの外に置かれます。
非課税取引の特徴は次のとおりです。
- 売上に消費税はかからない
- 仕入税額控除はできない
- 仕入や経費に含まれる消費税は、そのまま事業者のコストになる
非課税とされる取引には、大きく二つの理由があります。
一つは、消費税の性格になじまないものです。
土地の売買や賃貸がこれに当たります。土地は使用しても価値が減少せず、「消費」とは言えないためです。
もう一つは、社会的配慮によるものです。
公的医療保険が適用される医療行為や、居住用住宅の家賃が代表例です。
医療・住宅に見る非課税の実務的な影響
非課税の特徴が最も分かりやすいのが医療機関です。
患者は窓口で消費税を負担しませんが、医療機関は医薬品や医療機器、備品の購入時に消費税を支払っています。
しかし非課税取引であるため、これらの消費税は控除も還付も受けられません。
その分は診療報酬で調整されているとされていますが、実務上は十分とは言えないという声もあります。
住宅の家賃も同様です。
居住用として貸す場合は非課税ですが、事務所や店舗として貸す場合は課税取引になります。
用途の違いで消費税の扱いが変わる点は、実務上の注意点です。
免税の「落とし穴」――資金繰りへの影響
免税は事業者に有利に見えますが、注意点もあります。
仕入にかかった消費税は還付されるとはいえ、還付は申告後に行われるため、タイミングの問題が生じます。
日々の仕入時点では消費税を立て替えており、還付までの間は資金繰りを圧迫する可能性があります。
特に、仕入が先行しやすい業種や、輸出比率の高い事業者では、この点が経営上の重要な論点になります。
結論
「免税」と「非課税」は、消費者にとっては同じ「消費税ゼロ」に見えますが、事業者にとっては制度の意味がまったく異なります。
- 免税:課税取引の一種で、仕入税額控除・還付が可能
- 非課税:制度の対象外で、仕入税額控除は不可
消費税ゼロを議論する際には、価格表示や家計への影響だけでなく、事業者の実務や資金繰りへの影響も含めて考える必要があります。
制度の言葉の違いは、そのまま現場の負担の違いにつながるからです。
参考
日本経済新聞
「衆院選の焦点 消費税を知る(中)消費税の免税と非課税、違いは? 事業者の控除・還付に差」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

