1. 連立政権合意のポイント
自民党と日本維新の会がまとめた連立政権の合意書には、企業への特例的な減税制度「租税特別措置(租特)」の見直しが明記されました。租特とは、研究開発や賃上げなど一定の政策目的を持つ企業に対し、法人税を軽減する仕組みです。
しかし、政策効果が低いとされる項目は廃止を検討する方向となり、これまで「企業優遇」とも指摘されてきた制度の見直しが進みそうです。
2023年度には、租特による法人税減収は約2.9兆円に達し、そのうち研究開発税制と賃上げ促進税制だけで1.7兆円を占めています。企業の投資を促す目的がある一方で、「効果が限定的」との批判も強まっていました。
2. 消費税「食品2年ゼロ」案の行方
今回の合意書で注目されたのは、飲食料品への消費税について「2年間に限って対象としないことも視野に、法制化を検討する」との文言です。
つまり、「食品への消費税ゼロ(軽減ではなく非課税)」を2年間限定で導入する可能性を含んでいます。
ただし「視野に」との表現にとどまり、実施時期や制度設計の詳細は示されていません。
物価高が長期化する中で、家計負担をどう軽減するかは政府にとっても大きな課題です。実現すれば国民生活への影響は大きい一方、税収の減少や制度の複雑化など課題も多く、今後の議論の焦点になりそうです。
3. 社会保障制度の見直し
合意書では、社会保障の構造改革にも踏み込んでいます。
具体的には以下のような内容が挙げられています。
- 第3号被保険者制度の見直し
→ 会社員に扶養される配偶者が保険料を払わずに国民年金を受け取れる仕組みを再検討。 - 医療・介護の保険者再編や都道府県の役割強化
→ 制度の効率化と負担の公平化を目指す。 - 薬の保険適用範囲や金融所得連動の見直し
→ 株式配当などの所得が医療・介護保険料に反映されにくい現状を是正。
これらについて、2025年度中に具体的な骨子をまとめ、2026年度中に制度設計を行うとしています。
4. 税制と社会保障の「一体改革」へ
公明党も含む3党で6月に合意した内容を引き継ぎつつ、現役世代の負担軽減を掲げています。
現役世代の保険料率上昇を抑え、「引き下げを目指す」と明記された点は注目です。
今後は、「企業優遇から家計重視へ」の流れが本格化するかどうか。
租税特別措置の整理、消費税ゼロ構想、社会保障の制度再編という三つの改革が連動するかが焦点になります。
5. 生活者にとっての意味
消費税の軽減や年金制度の見直しは、家計への影響が大きいテーマです。
一方で、減税には財源が必要であり、社会保障をどう持続させるかという根本的な議論も欠かせません。
政治的な思惑が絡む中でも、私たち一人ひとりが「自分の生活や老後にどう関係するか」を考える視点が求められます。
まとめ
租特の縮小、食品への消費税ゼロ案、第3号被保険者制度の見直し――。
これらは「税と社会保障の再構築」に向けた第一歩です。
2025年度の制度設計が進む中で、私たち生活者が負担と恩恵のバランスをどう感じるか。
その議論が、これからの“新しい社会契約”を形づくることになるかもしれません。
出典:2025年10月21日 日本経済新聞朝刊「消費税『食品2年ゼロ』視野」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

