海外口座や海外不動産、海外法人持分を保有している場合、「整理は必要だと思うが、まだ早いのではないか」と判断を先送りにするケースが少なくありません。
しかし、海外資産は国内資産よりも、
- 手続に時間がかかる
- 法律関係が複雑
- 税務論点が多い
という特徴があります。
本稿では、海外資産を整理する「適切なタイミング」について整理します。
タイミングを誤ると何が起きるか
海外資産整理を後回しにすると、
- 相続発生後の手続長期化
- 納税資金不足
- 相続人間の紛争
- 重加算税リスク
が顕在化します。
整理は「問題が起きた後」では遅い場合があります。
タイミング1:60歳前後
なぜこの時期か
- 経営の第一線からの将来像を考え始める時期
- 事業承継を意識し始める時期
- 健康面の変化を意識する時期
海外資産も含めた全体棚卸しを行う適期です。
実務対応
- 海外資産の一覧化
- 評価の目安確認
- 国外財産調書の提出状況確認
まずは「見える化」です。
タイミング2:事業承継を検討する段階
自社株承継を考える際、海外資産を切り離して考えるのは危険です。
- 海外子会社
- 海外法人持分
- 個人海外資産
が絡む場合、承継設計は一体で行う必要があります。
タイミング3:海外居住者が相続人にいる場合
相続人が海外在住である場合、
- 現地手続
- 認証手続
- 税務調整
が複雑になります。
早期に設計しておくことで、相続開始後の混乱を防げます。
タイミング4:税務調査が視野に入ったとき
海外資産が税務論点となりそうな場合、
- 所得帰属
- 国外財産調書
- 評価資料
を整理します。
調査開始後では選択肢が狭まります。
タイミング5:円安・為替変動局面
海外資産は為替変動の影響を受けます。
円安局面では、
- 円換算評価額が増加
- 相続税試算が変動
する可能性があります。
為替環境も整理タイミングの一要素です。
整理の優先順位
海外資産整理は、いきなり売却や移転を意味しません。
1 所在と内容の把握
2 評価の確認
3 税務帰属の整理
4 承継方針の明確化
5 必要に応じた構造変更
段階的対応が基本です。
中小企業オーナー特有の視点
オーナー経営者の場合、
- 海外子会社
- 海外投資
- 個人海外口座
が経営戦略の延長で形成されていることがあります。
整理は「撤退」ではなく、「再設計」と捉えることが重要です。
遅らせるべきでないサイン
次のような状況があれば、整理を先送りすべきではありません。
- 海外資産の全体像を説明できない
- 相続人が存在を知らない
- 納税資金試算をしていない
- 国外財産調書の提出状況が曖昧
不透明さが最大のリスクです。
結論
海外資産を整理する最適なタイミングは、「問題が顕在化したとき」ではありません。
適切なのは、
- 60歳前後
- 事業承継検討時
- 相続人構成に変化があったとき
です。
重要なのは、売却や移転ではなく、把握と設計です。
国際的な情報交換が進む現在、海外資産は見えない資産ではありません。
早期に整理し、透明性を確保することが、将来の税務・紛争リスクを最小化する鍵となります。
参考
税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
