民泊・外資系ホテル課税の論点 ― 「公平な負担」とは何か

FP
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2024年、東京都の宿泊者数はついに1億人を突破。
外国人宿泊客が過半数を占め、東京は「国際観光都市」として新たな段階に入りました。
宿泊税の税収も過去最高を更新する一方、その課税のあり方が見直しの焦点になっています。
とくに議論を呼んでいるのが、「民泊」と「外資系高級ホテル」への課税です。


■ 民泊 ― 拡大する“グレーゾーン”

近年、Airbnb(エアビーアンドビー)などの民泊サービスを通じて、個人宅やマンションの一室に滞在する旅行者が急増しています。
東京都内では、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届け出件数が1万件を超え、特に渋谷区・新宿区・台東区などでは、外国人旅行者にとって定番の宿泊形態となりました。

しかし現状では、多くの民泊施設が宿泊税の課税対象外となっています。
理由は大きく2つあります。

  1. 宿泊料金が1万円未満のケースが多い
     現行制度では、1人1泊1万円未満の宿泊には宿泊税がかかりません。
     民泊では家族やグループ単位の利用が多く、1人あたりに換算すると非課税になるケースが多いのです。
  2. 運営主体が多様で、徴収・納付ルートが不明確
     ホテル業では宿泊業者が宿泊税を代行徴収しますが、民泊は個人や仲介プラットフォームが多様で、税務上の取り扱いが統一されていません。

このため、同じ地域・同じ観光客でも税負担が異なるという不公平が生じています。
都税制調査会でも「課税の公平性確保の観点から、民泊の扱いを整理すべき」と指摘。
今後は、プラットフォーム事業者を通じた一括課税・代行納付の仕組みが検討される可能性があります。


■ 外資系高級ホテル ― 「一律200円」は時代遅れ?

もう一つの焦点は、都心部で急増する外資系ラグジュアリーホテルです。
ブルガリホテル東京、JWマリオット東京、エディション銀座…。
いずれも1泊10万円を超える宿泊料が当たり前になっています。

にもかかわらず、これらのホテルもビジネスホテルと同じく宿泊税は一律200円
都税制調査会の提言では、「高額宿泊層の増加に伴い、実態に即した課税区分の見直しが必要」と明記されています。

たとえば、フランス・パリ市では宿泊料金に応じた定率制(最大5%)を採用。
京都市も2026年3月から、最高税額を1泊1万円
に引き上げます。
国際的な観光都市と比較しても、東京の税率は非常に低く抑えられています。

都内外資系ホテルの平均客室単価は約5万7000円と、日系ホテルの2.6倍。
宿泊税の「応能負担(支払い能力に応じた負担)」という観点からも、
価格帯ごとの段階的課税(新たな区分設定)が検討対象となるのは必然です。


■ 観光政策と税制のジレンマ

宿泊税はもともと、観光振興のための財源として創設されました。
しかし観光事業の規模拡大に伴い、現在は観光振興費のうち宿泊税でまかなえる割合が2割以下にまで低下。
税率を上げても、都の全体予算から見れば微々たる額にとどまるとの見方もあります。

このため、「増税で観光地の競争力を損なうリスク」も議論の的です。
観光業界からは、「税率よりも利便性や滞在環境の向上が重要」との声も多く、
単なる増税ではなく、観光戦略と一体化した制度設計が求められています。


■ 今後の焦点 ― 「定率制」と「デジタル課税」

都が検討する宿泊税見直しのカギは、次の2つです。

  1. 定率制(宿泊料金に応じた課税)
     高級ホテルからより多く税収を得る仕組み。
     一方で中小宿泊施設への影響をどう抑えるかが課題です。
  2. デジタル課税の導入
     民泊サイトなど、海外事業者も含めたオンライン経由の宿泊予約が主流化しています。
     課税の抜け漏れを防ぐためには、プラットフォーム単位での電子的な課税・納付システムの整備が不可欠です。

観光の形が変われば、税の形も変わる。
“東京モデル”の宿泊税がどのような形で再設計されるのか、
年内に公表される素案は全国自治体からも注目を集めています。


📝まとめ

  • 民泊は非課税ゾーンが多く、徴収ルートの整備が急務
  • 外資系ホテルは高額化が進み、一律200円では不公平感
  • 「定率制」導入と「デジタル課税」への移行が検討されている
  • 観光振興と税負担のバランスをどう取るかが今後の焦点

出典:2025年10月23日 日本経済新聞朝刊
「宿泊税でみる東京観光(上) 税収、コロナ前の2.5倍に」ほか関連報道を参考に構成


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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