国内外の株価が高値圏にあるなか、「いずれ大きく下落するのでは」と不安を感じる投資家が増えています。資産が順調に増えている時ほど、潜在的な下落リスクや、自分が本当に耐えられる損失額を把握しておくことが大切です。この記事では、株価が高い局面での資産配分の考え方、最大損失の目安、分散投資のポイント、そして投資期間との関係について整理します。
株価上昇局面で直面する下落リスク
主要な株価指数は過去に何度も大きな下落を経験してきました。たとえば、全世界株指数である「MSCI ACWI」は、ITバブル崩壊後に約4割、リーマン・ショックを含む金融危機では6割以上下落しました。
一般的な目安として、全世界株・先進国株は約4割、新興国株は約6割、海外債券は約2割の下落を想定しておくとよいとされています。
仮に株式部分が大きい資産構成であれば、想定最大損失は数百万円規模になる可能性があります。この数字を事前に把握し、精神的に耐えられない場合には、利益確定による比率調整といった選択肢もあります。
「金額」ではなく「比率」で管理する発想
資産管理では、株式の金額ではなく「比率」で考える方法も有効です。
特に株価が上がった局面では、株式比率が膨らみ過ぎることがあるため、一定のルールに従って比率を元に戻す「リバランス」が役立ちます。
預貯金を一定割合確保しておく利点としては、暴落時に安値で株式を買える点があります。資金を残しておくことは「攻め」の準備にもなるということです。
PER(株価収益率)から見る割高感
現在の米国株(S&P500)は予想PER23倍前後と、ITバブル期に近い水準にあります。過去データを見ると、PERが高いときに株式を購入した場合、10年間の平均収益率は低くなりやすい傾向があります。
短期から中期の投資期間であれば、割高局面での株式比率が高いことはリスクにつながりやすいと言えます。
この点を踏まえ、外債・国内債券・REIT(不動産投資信託)・金などへ一部を分散する判断も選択肢になります。ただし、日本人の場合は為替の影響を強く受けるため、外債を多く保有することには注意が必要です。円高で為替差損が生じやすい点を理解しておく必要があります。
分散投資の候補と注意点
債券分散の基本は日本国債とされますが、現在のように金利が上昇局面にある場合、通常の債券は価格が下がりやすい特徴があります。対策として、金利上昇時でも価格が下がらない個人向け国債(変動10年)を検討するのも一案です。
REIT(不動産投資信託)にも割安な局面があり、分散効果が期待できる場合があります。また、金はインフレ局面のヘッジとして機能する可能性があります。ただし、いずれも一時的な値動きが大きいため、資産全体とのバランスを踏まえた保有が重要です。
分かれ道は「投資期間」
株価が高いときでも、すべての人が資産配分を変える必要があるわけではありません。重要なのは「投資期間」です。
長期、特に20年以上の期間で運用する場合は、購入時点の割高・割安の影響は薄まっていきます。過去データでも、PERが高い時期に株式を購入しても、20年の長期では比較的高いリターンを維持しているケースが多く見られます。
そのため、投資期間が長く、かつ株価の変動リスクに精神的に耐えられるのであれば、無理に株式比率を下げず、長期保有を続けることも合理的な戦略になります。
結論
株価が高い局面では、不安を覚えるのは自然なことです。しかし、感情に左右されて判断すると、望まないタイミングでの売却に陥るリスクがあります。
大切なのは次の3点です。
- 最大損失額と自分の許容度を把握すること
- 比率で管理してリバランスを活用すること
- 投資期間によって戦略を分けること
短期の運用であれば守りを強める判断が必要ですが、長期投資が前提であれば、株価が高い局面でも長く保有を続けることが将来的な成果につながる場合があります。
自分の投資目的と投資期間を再確認し、納得感のある資産配分を作り直すタイミングとして捉えることが大切です。
出典
- 日本経済新聞「株高、リスク取り過ぎに注意」(2025年11月)
- MSCI、S&P500 各市場データ
- 投資助言会社・専門家コメント(本文より要点を引用)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

