株価5万円時代を読む⑦ 5万円定着の条件 ― 成長・統治・インフレの三位一体

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2025年10月27日、日経平均株価は史上初の5万円台に到達しました。
成長重視を掲げる高市政権の政策期待を背景に、海外マネーが日本市場へ流入しています。
米中対立の緩和も追い風となり、東京市場全体を押し上げました。

しかし、5万円を超えることはゴールではありません。
株価が一時的な熱狂ではなく、経済の実力に裏づけられた「定着点」となるためには、
成長・企業統治・物価安定という三つの条件が同時に満たされる必要があります。

1. 成長政策が呼び込む海外マネー

今回の株価上昇の原動力は、国内投資家よりも海外勢でした。
政府系ファンドや大手運用会社など、長期資金が再び日本株を買い始めたのは、
高市首相の政策姿勢に「構造改革と成長投資の両立」を見いだしたためです。

特に防衛・エネルギー・AIなどの産業政策が注目を集めました。
防衛費をGDP比2%に引き上げる目標を打ち出したことで、
三菱重工業、IHI、川崎重工業といった重工セクターは軒並み上場来高値を更新しました。

海外投資家が重視するのは、個別企業の業績ではなく「国家としての成長戦略の一貫性」です。
日本株全体に対する評価が「低成長・割安」から「構造改革・成長加速」へと変わりつつあります。


2. 統治改革とインフレ定着が変えた企業評価

株価の上昇を支えるもう一つの柱は、企業統治改革の進展です。
10年前から進められてきたコーポレートガバナンス・コードがようやく実を結び、
経営者が株主資本コストを意識して資本効率を高める経営を行うようになりました。

主要上場企業のROE(自己資本利益率)は9%台半ばと、
おおむね8%前後とされる資本コストを上回っています。
これは、日本企業の多くが「価値創造企業」として再評価される段階に入ったことを意味します。

さらに、3年前から進行してきたインフレ経済への移行も、
名目ベースの企業収益を押し上げています。
物価上昇とともに売上・利益が名目で増え、
企業価値が“物価に連動して拡大する”構造が定着しつつあります。


3. 金利と財政のバランスが試される

ただし、株価5万円台の定着にはリスクも潜みます。
ひとつは、少数与党である高市政権の政策実行力です。
財政拡張が「責任ある積極財政」から「放漫財政」に変質したとみなされれば、
国債市場が反発し、金利上昇が株価を直撃します。

BofA証券の圷正嗣氏は「株式市場は高市政権を機会とみているが、
債券市場はリスクとして見ている」と指摘しています。
株高と金利安の均衡を維持できるかが、2026年に向けた最大の焦点となります。


結論

日経平均が5万円を突破した今こそ問われるのは、
「持続的な成長を裏づける実体経済」と「信頼に支えられた市場運営」です。

産業政策による競争力強化、企業統治による資本効率の改善、
そして金融・財政政策の均衡。
この三つの柱がそろって初めて、5万円は“通過点”ではなく“定着点”になります。

市場が次に求めているのは、「期待」ではなく「実行」です。
政治と企業と投資家の信頼の連鎖こそが、日本経済を次のステージへ導く力となるでしょう。

出典・参考

  • 日本経済新聞(2025年10月28日)
     「日経平均、初の5万円 『成長重視』にマネー先回り」
     「変革期待、好循環生む 日経平均初の5万円」
  • UBS証券、BofA証券、JPモルガン証券各社コメント

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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