2025年10月27日、日経平均株価はついに史上初の5万円台を突破しました。
この「節目の数字」を支えているのは、どの業種・どの企業なのでしょうか?
表面的な指数の上昇の裏側では、AI・防衛・金融という3つのセクターが
“構造的な変化”を引き起こしています。
今回は、その内訳をデータとストーリーの両面から読み解いていきます。
🤖 1.AI・半導体関連 ― 世界マネーが集まる「日本の頭脳」
まず注目すべきは、AI・半導体関連銘柄の圧倒的な寄与度です。
| 主な銘柄 | 株価(10月27日) | 前月比 | 寄与度(概算) |
|---|---|---|---|
| ソフトバンクグループ(SBG) | 12,000円台 | +25% | 約300円 |
| アドバンテスト | 9,500円台 | +20% | 約200円 |
| 東京エレクトロン | 33,000円台 | +15% | 約180円 |
| SCREEN HD | 24,000円台 | +18% | 約120円 |
これら上位4社だけで、日経平均の上昇分の約4割を占めると推定されます。
AI関連の研究開発投資や、NVIDIAなど海外企業との技術連携報道が
日本株全体のリスクマネーを呼び込む構図となっています。
💬 解説メモ:
AI相場の本質は、単なる“期待”ではなく、
「企業の再定義(Business Redefinition)」にあります。
生成AIを組み込んだ事業モデルが、業界構造そのものを変え始めているのです。
🛠 2.防衛・造船・エネルギー ― 「経済安全保障」が動かす重工業
続いて、防衛・造船・エネルギー分野。
高市政権が掲げる「経済安全保障と産業防衛」の方針が、
市場で最も明確に反映されたのがこの分野です。
| 主な銘柄 | 株価(10月27日) | 年初来上昇率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 川崎重工業 | 8,000円台 | +85% | 36年ぶり上場来高値、防衛・造船の両軸 |
| IHI | 5,700円台 | +60% | ジェット・防衛装備、再エネ転換も評価 |
| 三菱重工業 | 11,000円台 | +55% | 水素タービン、国防機器、原子力技術 |
安全保障と再エネの「両輪化」が進む中、
国家プロジェクト型の資金流入が目立ちます。
円安・エネルギー高を背景に、重工業が再び成長産業化する兆しが出ています。
💴 3.金融・商社 ― インフレ経済の“勝者”
忘れてはならないのが、金融・商社セクターの存在。
これまで相場を支えてきた「金利差収益・資源商社モデル」が、
AI・防衛関連の循環と相まって再評価されています。
| セクター | 主な企業 | 株価傾向 | 背景要因 |
|---|---|---|---|
| メガバンク | 三菱UFJ・三井住友 | 高値圏 | 長期金利上昇と利ザヤ拡大 |
| 総合商社 | 三菱商事・伊藤忠商事 | 高止まり | 鉱物・防衛関連取引の拡大 |
| 証券・投資 | 野村HD | 堅調 | AI投資テーマ・NISAブームの恩恵 |
特に三菱UFJは2025年10月時点で時価総額18兆円に迫り、
「金融×AI」の融合分野で海外機関投資家の注目を集めています。
📈 業種別寄与度を可視化(概算)
| 業種分類 | 寄与度シェア | 主な牽引要因 |
|---|---|---|
| AI・半導体 | 約40% | 技術革新・海外資金流入 |
| 防衛・造船・エネルギー | 約25% | 政策期待・国防関連需要 |
| 金融・商社 | 約20% | 金利差益・資源取引 |
| 消費・流通・その他 | 約15% | 円安メリット・内需回復 |
※出所:筆者推計(2025年10月27日時点の寄与度ベース)
AIが市場全体を押し上げる“トップダウン型”の構造に対し、
防衛・金融が“ボトムアップ”で支える「二層構造型の相場」になっている点が特徴です。
🧮 PBR・PERから見た“過熱度”を測る
| セクター | PER(予想) | PBR | コメント |
|---|---|---|---|
| AI・半導体 | 30倍超 | 5倍 | 高成長期待が織り込み済み |
| 防衛・造船 | 18倍 | 1.8倍 | 実需伴う堅調上昇 |
| 金融・商社 | 12倍 | 0.9倍 | 割安・配当魅力継続 |
| 消費・小売 | 22倍 | 2.2倍 | 円安効果一服感あり |
AI銘柄の高PERが示すのは「期待の先行」ですが、
防衛・商社など実体需要を背景にした堅調セクターが支え役になっている点は
過去のバブル期とは異なる特徴です。
🧭 投資家・家計が押さえるべきポイント
- AIテーマの波を追うなら「供給側」を見る
- ソフトウェアよりも、半導体製造装置・素材・データセンター構築など「AIインフラ」に注目。
- 防衛・エネルギーは“政策銘柄”として長期保有
- 予算拡大は数年単位。短期値動きよりも中期トレンドで見る。
- 金融株はインフレ局面での“守りの資産”
- 利上げ・円安局面ではバランス型ポートフォリオの中核に据える。
🔮 結論:5万円は“AI相場”の通過点にすぎない
株価5万円はゴールではなく、
AI・防衛・金融が新たな経済構造を作り始めたスタート地点です。
- AIは「技術の覇権」を
- 防衛は「地政学的安全」を
- 金融は「資本の循環」を
それぞれ支える軸として、日本経済を再構築しています。
高市政権の“経済安全保障モデル”が持続的な成長軌道を描けるか――
ここから先の市場を占う最大の焦点となります。
📘 次回予告
シリーズ第4回は、
「政策と市場 ― 財政・金利・為替が交錯する2026年の展望」
として、財政政策・円相場・金利動向がどのように株価構造を変えていくのかを
家計・企業・投資家の3つの視点から読み解きます。
出典・参考:
- 日本経済新聞(2025年10月27日)「日経平均、初の5万円 米中対立の緩和期待」
- QUICKデータ・会社開示資料(2025年10月時点)
- 野村アセットマネジメント、ニッセイ基礎研究所 各種コメント
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
