「5万円」という節目が意味するもの
日経平均株価がついに5万円台目前まで上昇しました。
高市早苗氏の首相就任をきっかけに、政策期待やAI・防衛などの成長テーマが買われ、
企業統治改革(コーポレートガバナンス)による日本企業の“質”の改善も背景にあります。
ただし、株価の上昇は「日本経済が良くなった証拠」ではなく、
インフレと金融緩和が作り出したマネーの流れの結果でもあります。
だからこそ、個人の資産運用は“熱狂”ではなく“戦略”で臨む必要があります。
1. 株高の裏にある「3つの構造変化」
専門家が指摘する株価上昇の背景には、
単なる政治イベントではなく中長期的な構造変化が存在します。
(1)インフレ定着と企業収益の改善
緩やかなインフレが続くことで、企業の名目売上は増加。
これまでデフレ環境で抑えられていた価格転嫁が進み、
企業の利益率は改善傾向にあります。
(2)企業統治改革(PBR1倍割れ企業への圧力)
東京証券取引所が進める「資本効率改善」の流れで、
株主還元・自社株買いを行う企業が急増。
結果として株価の下支え要因になっています。
(3)AI・防衛・脱炭素といった“政策テーマ”
高市政権が掲げる成長戦略の柱には、AI・安全保障・半導体・再生可能エネルギーなど、
世界的にも資金が集まりやすい分野が並びます。
投資マネーの一部が“日本回帰”している点も注目です。
2. 家計の投資戦略 ― 「株高=買い時ではない」が正解
「株価5万円突破」と聞くと、
つい「乗り遅れたくない」と感じる方も多いでしょう。
しかし、投資の基本は“安く買って長く持つ”こと。
急上昇局面で新規投資を焦るのは得策ではありません。
●(戦略①)一括ではなく“積立”で分散する
新NISAを活用して、毎月一定額の積立を続けましょう。
高値づかみを避ける最良の方法は「時間の分散」です。
例えば、株価が一時的に下がっても、積立なら安く買える局面も取り込めます。
●(戦略②)国内株一辺倒にならない
日本株の比率が急に上がっている人は要注意。
米国・欧州・新興国など、世界の成長分野にも分散させることが、
長期リスクを抑えるカギです。
●(戦略③)“株以外”の資産も見直す
金(ゴールド)や債券、外貨建て資産など、
株とは異なる値動きをする資産を一定割合持つことで、
ポートフォリオ全体の安定性が高まります。
3. 為替と金利 ― 円安・インフレ時代の新たな常識
片山さつき財務相の就任で、
「1ドル=120円台が実力」という発言が注目を集めましたが、
現実の為替は151〜152円台と円安が進行。
低金利構造はすぐには変わらず、
円安・インフレが中長期に定着する可能性があります。
- 輸入品価格の上昇 → 生活コスト増
- 外貨建て資産・海外株式 → 為替差益が期待できる
つまり、家計全体で考えると、
「円だけで資産を持つことのリスク」が高まっている時代です。
4. “株価5万円時代”を賢く生き抜く3つの視点
| 視点 | 具体的行動 |
|---|---|
| 長期視点 | 短期の値動きに左右されず、5~10年のスパンで考える |
| 分散視点 | 株・債券・金・外貨など複数資産を組み合わせる |
| 現実視点 | 家計のキャッシュフローを把握し、投資は余裕資金で行う |
“株価5万円”は一つの節目にすぎません。
これから重要なのは、政策・物価・金利といった
「実体経済の変化にどう対応するか」です。
まとめ ― 熱狂ではなく構造を読む
株価が上がると、「日本復活」「株をやらなきゃ」といったムードが広がります。
しかし、真のチャンスは一時の高値ではなく、構造の転換点にあります。
- インフレと賃上げの定着
- 企業改革と成長分野の拡大
- 円安時代における国際分散投資の必要性
これらを見据えた投資・家計管理こそ、
“株価5万円時代”の真の資産運用戦略といえるでしょう。
出典:2025年10月22日 日本経済新聞朝刊
「新政権発足、市場の見方 経済政策実現で株価に上値余地」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
