新しいNISA制度が2024年にスタートして以来、投資を始める人は確実に増えています。非課税保有限度額の拡大や恒久化の効果もあり、「投資は特別な人のもの」というイメージは薄れ、日常的に資産形成を考える人が増えてきました。
こうしたなか、政府・与党では未成年でもNISA口座を開設できるようにする方向性が検討され始めています。これは家庭の資産形成にとっても、金融教育にとっても、大きな転換点になる可能性があります。
第1回は、この議論がなぜ始まったのか、その背景と全体像を分かりやすく整理します。
1. NISAの年齢制限撤廃を求める動きとは
2025年11月、高市早苗首相は、岸田文雄元首相らが提出した「資産運用立国議員連盟」の提言を受け取りました。その中で明確に示されたのが、
「未成年でもNISA口座を開設できるよう年齢制限を撤廃する」
という内容です。
現在の新NISAでは、積立投資枠・成長投資枠ともに口座開設は18歳以上が条件となっています。しかし、今回の提言はこの枠組みを見直し、子どもでもNISA口座を保有できる仕組みを求めるものです。
高市首相も「前向きに捉えている」とされ、政策判断としても実現可能性が高まっています。
2. 背景① 早期の資産形成ニーズの高まり
若年層の金融教育が全国的に強化される中、「18歳からでは遅い」という声も増えています。
特に以下の点が背景にあります。
- 子ども名義での資産形成を家庭内で行いたい
- 複利効果を最大限に生かすには早いほど良い
- 0歳からの積立は家計の長期設計と相性が良い
たとえば「月1万円の積立を0歳から18年間続けた場合」と「18歳から同じ金額で始めた場合」では、運用成果に大きな差が出ます。将来の教育費や独立資金など、長期資金づくりに向けた需要が高まっていることが、制度見直しを後押ししています。
3. 背景② ジュニアNISA終了後の“空白”
2023年で終了したジュニアNISAは、一定の役割を果たしたものの、多くの課題も残しました。
- 払い出し制限が使いにくかった
- 教育資金と投資資金の切り分けが難しかった
- 制度が恒久化されず、継続性に不安があった
今回の提言は、こうした不便を抱えたジュニアNISAとは異なり、より柔軟でシンプルな仕組みを整える狙いがあります。
4. 背景③ 資産運用立国への政策転換
政府は「資産所得倍増プラン」などを掲げ、国民全体の資産形成を促す方向へ舵を切っています。
未成年NISA解禁の議論はその延長線に位置づけられています。
- 若年層からの投資習慣
- 家族全体の資産形成の底上げ
- 金融リテラシー向上
- 市場の長期安定化への寄与
こうした政策目的が重なり、制度見直しが本格的に議論される段階に入っています。
5. さらに進む高齢者向けの制度整備
提言では、若年層だけでなく高齢者の投資環境整備の必要性にも触れています。
高齢期の生活が長期化する中で、「貯蓄から投資へ、そして資産の取り崩しへ」というライフサイクル全体を支える制度設計が求められているためです。
未成年から高齢者まで、全世代をカバーする資産形成制度の構築が国の重点方針になっていることが分かります。
6. 制度化のスケジュール感
金融庁は年齢制限撤廃を2026年度税制改正として要望しています。
そのため、最短で制度が動くとしても2026年以降が見込まれます。
ただし首相の反応が「前向き」であることから、議論が加速する可能性もあり、今後の税制審議会や金融庁の動きをチェックすることが重要です。
終わりに(結論)
未成年NISAの解禁が実現すれば、「家族の資産形成」が大きく変わります。複利の力を早期から取り入れることが可能になり、家庭単位の長期資産設計に新しい選択肢が広がります。
また、金融教育の実践の場としても大きな意味を持ちます。子どもがお金の仕組みを理解しながら、実際の運用を経験することで、将来の家計管理力が大きく向上すると考えられます。
制度改正はまだ議論段階ですが、方向性は明確になりつつあります。次回の第2回では、未成年NISAの導入が「家庭の資産設計をどのように変えるのか」を、ライフプラン視点で具体的に解説します。
出典
・日本経済新聞「NISA年齢制限撤廃を 岸田氏ら、首相に提言」
・金融庁 2026年度税制改正要望
・内閣府 資産所得倍増プラン関連資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

