有料化の対象となる施設・利用者は誰か ケアプラン一部有料化の実務的なポイント(第2回)

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ケアプランの一部有料化が検討される中で、最も気になる点のひとつが「どの施設が対象になるのか」という点です。介護保険制度における在宅サービスと施設サービスの線引きは複雑で、住宅型の施設であっても実態は施設サービスに近い場合があります。今回の見直しは、こうした実態との不整合を正す意図があり、特に重度の要介護者が入居する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が焦点となっています。

本稿では、有料化の対象として想定されている施設や利用者の特徴を整理し、なぜこの分類が重要なのかを制度の構造とあわせて解説します。

1 有料化の対象が想定される施設の特徴

厚生労働省が議論の中心に据えているのは、次のような施設です。

  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • いずれも「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない施設

これらは制度上「在宅サービス」として扱われています。つまり、入居者の介護サービスは外部の事業者が訪問して提供する形です。そのため、ケアマネジャーは居宅介護支援事業所に所属し、ケアプランも無償で作成されてきました。

しかし近年は、これらの住まいに要介護度の高い人が多く入居しており、施設サービスに近いケアが必要となるケースが増えています。そのため、負担の公平性を確保する観点から、ケアプランの一部有料化が議論されています。


2 なぜ「特定施設」の指定が線引きの基準になるのか

特定施設入居者生活介護とは、都道府県知事の指定を受けた施設が、施設内で一体的に介護サービスを提供できる仕組みです。介護職員の配置基準やサービス内容が明確に定められ、施設内で生活介護を完結できるのが特徴です。

指定を受けている施設では、

  • ケアプランは施設ケアマネが作成
  • 費用はサービスの一体的提供の中で整理
  • 利用者負担の仕組みも施設サービスとして明確化

という体系が整っています。

一方、指定を受けていない住宅型ホームやサ高住は、形式上はあくまで「住まい」であり、サービス提供は訪問介護・訪問看護など外部事業者に依存します。そのため、

  • ケアマネは居宅介護支援
  • ケアプランは無償提供
  • 比較的軽度者を想定した仕組み

となっていました。

制度上の想定と実際の利用者像の乖離が大きくなったことが、今回の見直しの出発点といえます。


3 重度者向けホームが対象となる理由

今回の議論では「重度の要介護者が多いホーム」が特に対象となっています。その理由は主に次の通りです。

(1) 実態が施設サービス化している

要介護度3以上の利用者が多いホームでは、日常生活の大半に介助が必要となるため、外部の訪問サービスだけでは支えきれず、実質的に施設サービスと同じレベルのケアになっているケースがあります。

(2) ケアマネジメントに高度な専門性が必要

重度者のケアプランは、医療連携や多職種調整の頻度が高く、作成に必要な時間と専門性が大きく変わります。

(3) 利用者負担の公平性の観点

施設サービスを利用している人は、一定の負担を前提にケアプランが組み込まれていますが、在宅扱いのホームでは無償でした。この差を是正する意図があります。


4 想定される利用者像

有料化の対象になり得る利用者は、次のような特徴を持つ場合が多いと考えられます。

  • 要介護度が高く、日常生活の大部分に介護が必要
  • 医療ニーズが高く、看護との連携が必要なケース
  • 外出や通所が難しく、在宅サービスだけでは支えにくい状態
  • 日中・夜間の生活支援が連続的に必要
  • 住まいとしてホームに入居しながら、実質的に施設と同じケアを受けている

こうした利用者は、ケアマネジメントにかかる負担が大きく、ケアプランの作成・調整頻度も高くなります。


5 ホーム側の影響と再編の可能性

今回の見直しは、利用者だけでなく事業者側にも少なからず影響を与える可能性があります。

(1) ホームのサービス設計の見直し

重度者が多い場合、ホーム側が介護提供体制を強化し、特定施設の指定取得を検討する動きが広がる可能性があります。

(2) ケアマネとの役割分担の明確化

ケアプラン有料化に伴い、ケアマネジャーの専門性と役割がより明確に問われる段階に入っていきます。

(3) 利用者層の変化

負担が発生することで、比較的軽度の利用者が他の選択肢を検討する可能性もあり、ホームのターゲットがより明確化する可能性があります。

こうした動きは、2027年度改正に向けて段階的に進むことが想定されます。


結論

ケアプラン一部有料化の対象は、制度上は在宅扱いでありながら実態は施設サービスに近い住宅型有料老人ホームやサ高住が中心です。特に重度の要介護者が多く入居するホームでは、ケアマネジメントに必要な業務量や専門性が高く、負担の公平性という観点から見直しの必要性が指摘されてきました。

今回の制度改正は、在宅・施設の枠組みの整理や利用者負担のあり方を見直す重要なステップです。次回は、ケアプラン有料化が利用者の家計、ケアマネ、事業者にどのような変化をもたらすのかについて掘り下げます。


参考

・厚生労働省 社会保障審議会 介護保険部会資料
・日本経済新聞(2025年12月10日 朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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