暗号資産取引に分離課税が導入されることで、税制は明確になりますが、税務調査がなくなるわけではありません。
むしろ、制度が整備されることで、「正しく申告しているか」「制度を正しく使っているか」という点は、これまで以上に確認されやすくなると考えられます。
ここでは、暗号資産取引に関する税務調査で、実際にどのような点が確認されるのかを整理します。
まず確認されるのは「暗号資産取引をしているかどうか」
税務調査では、最初に「そもそも暗号資産取引を行っているかどうか」が確認されます。
金融機関口座の入出金、取引所からの送金履歴、過去の申告内容などから、暗号資産取引の有無が把握されることがあります。
申告書に暗号資産に関する記載がなくても、取引実態が確認されれば、説明を求められることになります。
取引の全体像が把握できるか
次に重視されるのが、取引の「全体像」です。
具体的には、
- どの取引所・業者を利用しているか
- 国内取引か海外取引か
- 取引回数や取引規模はどの程度か
といった点が確認されます。
一部の取引だけを申告している場合や、特定の取引所の履歴しか提示できない場合には、申告漏れを疑われる可能性があります。
所得区分の判定は適切か
分離課税が導入された後は、所得区分の判定が重要な確認ポイントになります。
税務調査では、
- 分離課税の対象とした暗号資産は制度要件を満たしているか
- 雑所得として処理すべき取引を、分離課税として申告していないか
といった点が確認されます。
同じ暗号資産取引でも、業者や取引形態によって取扱いが異なるため、区分の根拠を説明できるかどうかが重要になります。
取得価額と譲渡価額の算定根拠
暗号資産取引では、取得価額の計算が調査の中心になることが少なくありません。
税務調査では、
- 取得時期と取得単価
- 譲渡時期と譲渡単価
- 手数料の取扱い
- 複数回取得している場合の計算方法
などが確認されます。
帳簿や取引履歴が不十分な場合、税務署側の計算方法で所得金額が算定されることもあります。
申告していない取引がないか
暗号資産同士の交換、取引所間の移動、ウォレットを介した取引などについても確認が及びます。
課税対象かどうかにかかわらず、
- 取引として把握しているか
- 帳簿や履歴に反映されているか
が問われます。
特に「課税されないと思っていた」「利益が出ていないと思っていた」という説明は、その根拠が示せなければ通用しにくい点に注意が必要です。
繰越控除の適用状況
分離課税に伴い、損失の繰越控除を利用している場合には、その適用状況も確認されます。
具体的には、
- 繰り越した損失額の算定根拠
- 各年の控除状況
- 分離課税の範囲内で処理されているか
といった点です。
繰越控除は有利な制度である一方、計算誤りが起こりやすい項目でもあります。
電子データの保存状況
近年の税務調査では、帳簿や証憑の「保存状況」そのものが確認対象になります。
暗号資産取引では、
- 取引履歴のCSVデータ
- 取引所の画面情報
- 集計前の元データ
が保存されているかどうかが確認されることがあります。
e-Taxで申告していても、裏付けとなる電子データが残っていなければ、不利な判断につながる可能性があります。
結論
暗号資産取引に関する税務調査では、「利益が出ているかどうか」だけでなく、「取引全体を正しく把握し、説明できるかどうか」が重視されます。
分離課税が導入された後は、所得区分の判定や繰越控除の適用など、確認ポイントはさらに細かくなります。
日頃から帳簿や取引履歴を整理し、根拠を示せる状態を保っておくことが、結果的に最も有効な調査対応になるといえるでしょう。
参考
・税のしるべ「暗号資産取引に分離課税を導入へ、繰越控除制度も創設」(2026年1月12日)
・令和8年度税制改正大綱
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
