日銀ETF売却はなぜ「100年計画」になったのか― 異次元緩和の後始末と日本経済に残る影 ―

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

日本銀行が長年にわたり買い入れてきたETF(上場投資信託)の売却が、静かに始まりました。
その総額は時価ベースで約95兆円。売却完了までに要する期間は、実に100年以上と試算されています。

金融緩和の出口戦略として、これほど長期にわたる「後始末」が必要になる政策は、世界的にも例がありません。本稿では、日銀ETF購入の背景、売却が難航する理由、そして日本経済に残る構造的な影響について整理します。

1.ETF購入は「危機対応」として始まった

日銀のETF購入は、2010年に導入されました。当時はデフレと株安が続き、企業や家計のリスク回避姿勢が経済全体を冷え込ませていました。
株価下落を抑え、企業心理を下支えするための「臨時かつ異例の措置」として始まったのがETF購入です。

その後、異次元緩和の柱の一つとして購入規模は拡大し、株式市場に対する影響力は急速に高まりました。結果として、日銀は日本株市場の最大級のプレーヤーとなります。

2.売れない理由は「影響が大きすぎる」から

現在、日銀が保有するETFは、簿価で約37兆円、時価では約95兆円と推計されています。
これを短期間で売却すれば、株式市場に大きな混乱を招くのは避けられません。

そのため、日銀は年3300億円程度という極めて緩やかなペースでの売却を計画しています。
この結果、売却完了までに100年以上を要する「超長期計画」となりました。

3.「物言わぬ大株主」がもたらす副作用

ETFを通じて日銀が間接的に保有する株式は、多くの企業で5%を超えています。
一部の企業では2割前後に達し、日銀は事実上の大株主です。

議決権は運用会社に委ねられているため、日銀自身が経営に口出しすることはありません。しかし、「売る怖さ」のない株主が長期に居座ることが、企業経営の規律を弱める可能性は否定できません。
また、市場における価格形成を歪めたという批判も根強くあります。

4.REIT保有というもう一つの長期問題

日銀はETFと同時にREIT(不動産投資信託)も大量に購入してきました。
その結果、都心部の大型オフィスビルを間接的に保有する「大地主」とも言える存在になっています。

REITの売却完了にはETF以上の時間がかかるとされ、都市部の不動産市況に対する影響も長期化します。金融政策が資産価格を押し上げ続ける構図は、出口においても簡単には解消されません。

5.「やめられない政策」のリスク

最大の問題は、将来の景気後退局面で「再び買う誘惑」が残り続ける点です。
実際、株価が急落した場面では、ETF購入再開を示唆する声が日銀内部で上がったと報じられています。

一度始めた非常措置が恒常化し、やめるにもやめられない状態に陥る。
ETF問題は、金融政策の信認と制度設計の難しさを象徴する事例と言えるでしょう。

結論

日銀のETF売却が100年計画になった背景には、「買うことはできても、売ることは極めて難しい」という資産購入政策の本質があります。
異次元緩和は短期的には市場を安定させましたが、その代償として、将来世代に長期の調整コストを残しました。

金融政策は即効性がある一方で、出口まで含めた設計が不可欠です。
日銀ETF問題は、日本経済が今後、危機対応と平時の政策をどう切り分けていくのかを考える上で、重要な教訓を示しています。

参考

・日本経済新聞
 「難路の日銀ETF売却(上)緩和出口、危うい100年計画」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました