2025年9月19日、日本銀行は金融政策決定会合で、保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の市場での売却を始めることを決定しました。これまで金融緩和の一環として大量に保有してきた資産を、今度は少しずつ市場に戻していく流れに転じます。
この記事では、売却の内容、狙い、そして市場や私たちへの影響を整理します。
1. 売却の内容
日銀が決めた売却のポイントは以下の通りです。
- ETF
- 年間売却ペース:簿価ベースで3,300億円程度
- 時価ベースでは6,200億円程度
- 市場全体の売買代金に占める割合は 0.05%程度
- REIT
- 年間売却ペース:簿価で50億円程度、時価で55億円程度
- こちらも市場全体の0.05%程度に相当
売却は「準備が整い次第」始める予定で、市場状況に応じて一時停止や見直しも可能としています。
日銀が保有する残高は、
- ETF:簿価で37兆円、時価で70兆円
- REIT:簿価で6,500億円、時価で7,000億円
と非常に大きな規模。今回の売却はごく小さな一歩といえます。
2. 背景 ― なぜ今売却なのか?
日銀がETFやREITを買い始めたのは、株価の下支えや景気刺激のためでした。リーマン・ショック後の不安定な時期やアベノミクス以降の金融緩和政策の中で、その保有額は膨らんできました。
しかし、
- 市場への過度な依存を避けたい
- 将来的な出口戦略を少しずつ示す必要がある
といった課題が以前から指摘されていました。
実は日銀は過去にも、銀行が保有する株式を買い取った後、2016年から2025年7月にかけて売却を進めた経験があります。その時も「市場全体の売買代金の0.05%」というペースでした。今回のETF・REIT売却も、それに倣った形です。
3. 金利政策との関係
同じ会合で、政策金利(無担保コール翌日物レート)は 0.5%に据え置き となりました。ただし、審議委員の一部は0.75%への引き上げを主張しており、金融引き締めへの圧力も強まっています。
アメリカではFRBが9月17日に利下げ(0.25%)を決めました。日本は利上げを巡る議論が続いており、
- 市場では「10月にも利上げの可能性」
- 一方で「政治情勢次第で年末以降にずれる可能性」
という見方が入り混じっています。
4. 今後の注目点
ETFやREITの売却自体は小さな規模であり、すぐに市場が大きく揺れるとは考えにくいでしょう。ただし、次の点に注目が必要です。
- 市場への影響
年0.05%という割合は極めて小さいですが、「日銀が売り手に回る」という心理的な影響は無視できません。投資家心理や株価形成にどう影響するかが注目されます。 - 利上げとの連動
資産売却と政策金利の引き上げが重なれば、金融環境が一段と引き締まる可能性があります。住宅ローンや企業の資金調達コストにも影響が及びかねません。 - 政治と経済の関係
自民党総裁選(10月4日投開票)の結果次第で、財政・経済政策の方向性が変わります。新政権の政策と日銀の対応の組み合わせが、市場の大きなテーマになるでしょう。
まとめ
今回の日銀の決定は「巨大に膨らんだ資産の処分をどう進めるか」という長年の課題に一歩踏み出したものです。売却規模は小さく、市場を大きく揺らすことは意図していません。しかし、利上げのタイミングや政治の行方と重なることで、今後の金融政策や投資環境に少なからず影響を与える可能性があります。
「日銀がいつまで緩和マネーの後始末を続けるのか」、そして「利上げとどう組み合わせるのか」。私たちの資産運用や家計にも直結するテーマとして、今後の動きを注視する必要があります。
👉 今回の記事は 2025年9月19日付 日本経済新聞夕刊 の報道を参考にしています。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
