日本の労働力人口は過去最多でも、なぜ人手不足は解消しないのか

FP
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日本の労働市場に、ひとつの象徴的な数字が現れました。
2025年の労働力人口が初めて7000万人を超え、過去最高を更新したという事実です。人口減少社会において、働く人の数が増えていること自体は一見すると明るい材料にも見えます。

しかし、現場では依然として人手不足感が強く、経済全体の供給力が十分に回復しているとは言い切れません。
なぜ労働力人口が増えているにもかかわらず、日本経済は「人手不足」から抜け出せないのでしょうか。本稿では、その背景と制度的課題について整理します。


労働力人口は7000万人超え、支え手は女性と高齢者

総務省が公表した2025年の労働力調査によると、労働力人口は7004万人となり、統計開始以来初めて7000万人を超えました。就業者数も6828万人と過去最高を更新しています。

この増加を支えているのは、主に女性と高齢者です。
女性の労働力人口は前年比1.4%増、65歳以上は1.5%増と全体を押し上げました。一方で、64歳以下の男性はほぼ横ばいであり、従来の主力世代が増えているわけではありません。

人口構造の変化を背景に、働き手の「量」を確保する段階から、「誰が、どのように働くか」が問われる局面に入っていることが読み取れます。


増えているのは短時間労働、総労働時間は減少

注目すべきは、働く人が増える一方で、労働時間が減少している点です。
2025年の平均年間就業時間は1788.3時間と、前年より0.9%減少しました。10年前と比べると約8%の減少です。

背景には、パートやアルバイトなど短時間勤務の増加があります。
女性や高齢者が労働市場に参加する際、フルタイムではなく、時間を限定した働き方を選択するケースが多いことが影響しています。

結果として、労働力人口という「人数」は増えても、経済全体として提供できる労働量はそれほど増えていない、という構造が生じています。


女性の非正規比率は依然として高水準

女性の就業状況を見ると、改善の兆しと課題が同時に存在しています。
2025年の女性の非正規雇用比率は52.0%と、前年からわずかに低下しましたが、依然として半数以上が非正規です。

育児や介護との両立、配偶者の収入との関係、社会保険制度の制約など、さまざまな要因が女性の働き方を制限しています。
能力や意欲があっても、労働時間を抑えざるを得ない構造が続いている点は、日本経済にとって大きな機会損失と言えるでしょう。


2030年代には労働力人口も減少へ

足元では増加している労働力人口ですが、将来に目を向けると楽観はできません。
15〜64歳人口の減少が本格化する2030年代には、労働力人口自体が減少に転じる可能性が高いと指摘されています。

女性や高齢者の参加拡大だけで、長期的な労働力不足を補うには限界があります。
量の確保だけに頼る戦略は、すでに持続性を失いつつあります。


年収の壁と制度設計が労働時間を抑制している

労働時間が伸びない大きな要因のひとつが、いわゆる年収の壁をはじめとする制度面の問題です。
一定の年収を超えることで、社会保険料負担や税負担が急増する仕組みは、働き控えを誘発します。

特に短時間労働者にとっては、少し働く時間を増やすだけで手取りが減るケースもあり、合理的な判断として労働時間を抑える行動が選ばれます。
この構造が放置される限り、潜在的な労働力を十分に活用することは困難です。


人手不足時代の本質は生産性の問題

完全失業率は2.5%と低水準を維持しており、働きたい人が職に就けない状況ではありません。
それでも人手不足感が強いのは、労働投入量が不足しているだけでなく、生産性の伸びが追いついていないためです。

省人化やデジタル化への取り組みが進む一方で、最低賃金の上昇などを背景に、求人を抑制する企業も増えています。
単純に人を増やすのではなく、限られた人材で付加価値を高める経済構造への転換が求められています。


結論

2025年、日本の労働力人口は過去最多となりました。しかし、その内実を見ると、短時間労働の増加や制度的制約により、経済全体の供給力は十分に拡大していません。

今後、人口減少が本格化する中で、労働力不足はさらに深刻化します。
その対応策として必要なのは、
・年収の壁を含む制度の見直し
・女性や高齢者が無理なく働ける環境整備
・生産性向上を前提とした成長戦略

これらを同時に進めることです。
労働力人口の「数」に一喜一憂するのではなく、働き方と制度の質を問い直す段階に、日本はすでに入っています。


参考

・日本経済新聞 朝刊
 日本の労働力、なお不足(2026年1月31日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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