ここまで5回にわたって、GLTD(団体長期障害所得補償保険)の仕組みや税制、健康経営との関わり、メリット・デメリットを整理してきました。
最終回は、日本におけるGLTDの課題と今後の展望を考えてみます。
日本でのGLTD普及の現状
- 大手企業を中心に導入が進み、保険料収入は6年で7割増。
- とはいえ、全体としてはまだ一部の企業に限られており、特に中小企業での普及はこれから。
- 外資系コンサルや大手損保が販売・制度設計をリードしている段階。
今後の課題
1. 中小企業での普及
- 保険料負担がハードル。
- 制度設計や従業員説明の手間がネックになりやすい。
2. 制度の理解不足
- 導入していても「使い方を知らない従業員」が多い。
- 福利厚生は“見える化”しなければ安心につながらない。
3. 公的制度とのすみ分け
- 傷病手当金や障害年金との関係が分かりにくい。
- 過剰補償にならないよう制度調整が必要。
将来展望
1. 雇用流動化の進展
- 転職が当たり前になる時代に「勤続年数に依存しない補償制度」はさらに注目される。
- 採用活動の場で「GLTDあり」が企業の強みとしてアピールされるようになる可能性大。
2. 健康経営の深化
- 人的資本投資の開示が進み、健康経営優良法人の認定を受ける企業が増加。
- GLTDは「従業員を大切にする姿勢」を示す証拠となり、金融・投資家からの評価も高まる。
3. 保険会社の付加価値サービス拡大
- 健康診断の再検査促進やストレスチェック提供など、「予防」や「メンタルケア」との連携が広がる。
- 休職中も積立投資を継続できる仕組みなど、資産形成支援との掛け合わせも増えていく。
税理士・FPの視点
GLTDは、これからの時代における「企業の新しい責任」と言えます。
給与や賞与といった短期的な報酬だけでなく、
「働けなくなったときに生活を守る」という長期的な安心を提供することで、企業と従業員の信頼関係を深めます。
また、導入企業は経費算入による節税効果も得られるため、
単なるコストではなく「人材投資」としての合理性もあるのです。
まとめ
- GLTDは日本でまだ成長途中だが、雇用流動化・健康経営・人的資本開示の流れにより普及拡大が期待される。
- 課題は「中小企業への広がり」「従業員への理解浸透」「公的制度とのすみ分け」。
- 将来的には福利厚生の標準装備として、より多くの企業に導入される可能性が高い。
👉 これで全6回のシリーズが完結しました。
GLTDはまだ耳慣れない制度かもしれませんが、今後の「働き方」と「安心」を考える上で重要なキーワードになるでしょう。
(参考 2025年9月9日付 日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

