日経平均株価が4万5000円台に到達し、株式市場は最高値を更新し続けています。
華やかな数字が並ぶ一方で、会場に集まる個人投資家たちの声は、必ずしも短期的な値動きに踊らされるものではありませんでした。先日、都内で開催されたIRフェアを歩き、個人投資家の生の声を聞いてみると、「新しい投資の潮流」が垣間見えてきます。
■ 投資を「世代」でつなぐ
京都府から訪れた50代男性は、社会人1年目の娘さんと一緒に株式投資を始めたといいます。
「自分は財形貯蓄くらいで終わってしまった。だからこそ、子どもには早いうちから投資を学んでほしい」。
株高を追うよりも、将来世代に「投資の意識」を伝えることが目的です。
■ 企業を応援する気持ち
栃木県の50代女性は、「日本企業を応援しなくちゃ」と語ります。
リーマン・ショック後に株を買った体験が成功体験となり、それ以降は日本株を中心に長期保有。「企業は底力を見せてほしい」という思いで投資を続けているそうです。
投資を“投機”ではなく“応援”と捉える姿勢は、多くの個人投資家の中に広がっていました。
■ インフレと資産防衛
「年率3%で物価が上がれば、預金に眠らせておくのは目減りするだけ」。
60代男性はそう警鐘を鳴らし、株式を持つ理由をインフレ対策と位置付けます。40代男性も「名目ベースでは企業利益は増えていく」と話し、インフレ時代における株式投資の意義を感じていました。
単なる値上がり益だけでなく、「資産の防衛」という観点も投資家の意識に根付きつつあります。
■ 警戒する声も
もちろん、冷静な声も聞かれました。
「AI相場は行き過ぎ」と空売りを仕掛ける投資家。投資歴50年のベテランは「ここからは難しい。企業の“質”で差がつく」と慎重です。
バブル崩壊で大きな損失を経験した世代は「もう株はやらない」と市場を離れた一方、今の株高が新たな投資家層を引き寄せているのも事実です。
■ 家計調査にも変化
金融経済教育推進機構の調査によれば、「リスクはあるが収益性の高い商品を持ちたくない」と答えた人の割合は、2018年まで80%以上を占めていました。
しかし2024年は47.6%まで低下。逆に「積極的に」「一部は保有したい」との回答が5割を超えています。
日本人の投資マインドが、確実に変わりつつあることが分かります。
■ 世代を超える投資の学び
会場では高校生の姿もありました。
「会社の成長性や安定性を学びたい。将来のために今から勉強しておくのがいいと思うんです」と語る10代の声。
彼女たちにとって重要なのは「年末に日経平均が5万円に届くか」ではありません。長い時間軸で資産を育てること、その準備を今から始めることが大切なのです。
■ 初心者向け・投資を始めるときのポイント
株式市場に関心を持っても「どこから手を付けたらいいの?」と迷う人も多いでしょう。ここでは、投資を始めるにあたっての基本的な考え方を整理します。
- 少額から始める
月1万円程度からでも、継続することが大切です。 - 分散投資を意識する
投資信託やETFを活用すれば、自動的に分散が可能です。 - 時間を味方につける
積立投資でリスクをならし、長期で成果を狙います。 - 「応援したい企業」に注目する
商品やサービスに共感できる企業を選ぶと、投資が学びに変わります。
■ 実践編:NISAとiDeCoの活用
投資を始める際に、多くの人が最初に検討するのがNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
NISA(ニーサ)
- 特徴:投資で得た利益や配当が非課税になる制度。
- 新NISA(2024年開始)では、年間投資枠は最大360万円(成長投資枠+つみたて投資枠)。
- ポイント:流動性が高く、いつでも売却・換金が可能。初心者でも使いやすい制度です。
iDeCo(イデコ)
- 特徴:老後資金づくりに特化した制度。掛金が全額所得控除になり、節税効果が大きい。
- 制限:60歳まで原則引き出せないため、「長期の老後資金専用口座」として位置付けるのが基本。
- ポイント:節税と将来の年金づくりを同時に実現できます。
NISAとiDeCoの使い分け
- 「自由度を優先して少額から投資したい」 → NISAからスタート
- 「節税をしながら老後資金を準備したい」 → iDeCoを活用
両方を併用することで、短期〜中期(NISA)と長期(iDeCo)をバランス良くカバーできます。
■ 未来志向の市場へ
株式市場が健全に育つには、企業が資本を眠らせず、新しい分野へ挑戦し続けることが不可欠です。
投資家が「応援」し、企業が「挑戦」する。
その循環が続けば、日本市場は世代を超えて豊かさを広げる場となり得るでしょう。
📖 参考
・「〈スクランブル〉新投資家 裏切らぬ循環を」日本経済新聞(2025年9月30日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

