決算書を見れば、売上や利益、借入金の状況など、企業の財務状態は一通り把握できます。しかし、長く続いている会社や、景気の波を乗り越えてきた会社を見ていると、「数字だけでは説明できない強さ」があると感じる場面も多いのではないでしょうか。
従業員同士の助け合い、取引先との長年の信頼関係、現場に蓄積されたノウハウ。こうした要素は決算書には表れませんが、企業を下支えする重要な力です。
近年、このような「数字に出ない情報」を 非財務情報、あるいは 知的資産 として捉え、経営に活かそうという考え方が注目されています。
非財務情報とは何か
非財務情報とは、売上高や利益といった数値では表せない企業の特徴や強みを指します。
具体的には、従業員の技術や経験、経営者の意思決定力、業務が属人化しない仕組み、顧客や地域との信頼関係などが該当します。
これらは「人的資産」「構造資産」「関係資産」と整理されることが多く、いずれも企業の競争力の源泉となるものです。
なぜ今、非財務情報が重要なのか
企業を取り巻く環境が変化する中で、評価の軸も変わりつつあります。
消費者や取引先は、価格や性能だけでなく、「どのような姿勢で事業を行っている会社なのか」「人や地域を大切にしているか」といった点を見るようになっています。
また、金融機関や投資家も、過去の実績だけでなく、将来にわたって事業を継続できる体制があるかを重視します。非財務情報は、その判断材料の一つになります。
非財務情報を活用するメリット
非財務情報を意識的に整理し、活用することで、いくつかの効果が期待できます。
第一に、ブランド価値や信頼性の向上です。
長年の取引実績や従業員定着率の高さといった情報は、「この会社なら安心できる」という印象につながります。
第二に、金融機関対応の面でのプラス効果です。
人材育成や業務体制が整っていることが伝われば、将来性のある企業として評価されやすくなります。
第三に、採用や人材定着への効果です。
職場環境や教育体制といった非財務情報は、求職者にとって重要な判断材料になります。
非財務情報をどうやって把握するか
非財務情報は、帳簿を見ても自然には集まりません。
把握するためには、意識的に「聞く」「振り返る」作業が必要です。
まず、経営者や役員、ベテラン従業員、現場スタッフなど、立場の異なる人から話を聞きます。
「他社と比べて強みだと思う点」「お客様からよく褒められる点」など、具体的なエピソードを引き出すことが重要です。
次に、企業の歴史を振り返ります。
創業から現在までの出来事を年表にまとめ、「なぜそれが実現できたのか」を言語化していくことで、技術や仕組み、関係性といった知的資産が見えてきます。
集めた非財務情報をどう活かすか
非財務情報は、集めただけでは意味がありません。
重要なのは「どう活かすか」です。
社外向けには、ホームページや会社案内、営業資料などを通じて、自社の強みとして伝えます。
一方、社内向けには、強みを共有し、教育や仕組みに落とし込むことが大切です。
例えば、ベテラン従業員の経験に頼っていた業務をマニュアル化したり、動画で残したりすることで、個人の強みを組織の財産に変えることができます。
こうした積み重ねが、企業全体を同じ方向に向かわせ、持続的な成長につながります。
結論
非財務情報は、目に見えにくく、後回しにされがちな要素です。しかし、企業の本当の強さは、こうした「数字に出ない資産」に支えられていることが少なくありません。
自社の非財務情報を認識し、言語化し、活用することは、特別な企業だけの話ではなく、すべての中小企業にとって意味のある取り組みです。
まずは、自分の会社にどのような強みがあるのか、改めて振り返るところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考
・『企業実務』2025年11月号
「中小企業のための『非財務情報』を把握&開示する方法」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

