――シリーズ「東京の人口増、その9割が高齢者だった」第2回
前回の記事では「東京の人口増加の9割が高齢者」という事実と、その背景にある「年齢ごとの住まい選びの変化」についてお話しました。今回はさらに一歩踏み込み、「数字」で東京の高齢化を見ていきましょう。統計や予測をひも解くと、これからの東京が直面する現実がより鮮明に浮かび上がります。
高齢化率の推移 ― 3人に1人が高齢者の時代へ
まず注目すべきは「高齢化率」です。高齢化率とは、人口に占める65歳以上の割合のことです。
- 2020年の東京都の高齢化率は 22.7%
- 2065年には 29.4% に上昇見込み
つまり、40年後には東京で暮らす人の約3人に1人が高齢者という時代がやってきます。
かつては「東京は若い街」と言われてきましたが、今や地方と同じく急速な高齢化に直面しているのです。
後期高齢者の急増
高齢者と一口に言っても、特に大きな課題になるのが「後期高齢者(75歳以上)」の増加です。
- 2020年時点の東京都の後期高齢者人口は約166万人
- 2055年にはその数が 36%増 すると推計されています
この層は医療や介護のニーズが非常に高まる年代です。
「元気なお年寄りが増える」というよりは、「日常生活のサポートを必要とする人が増える」と考えた方が現実に近いのです。
要介護認定者と認知症高齢者の予測
さらに具体的な数字を見てみましょう。
- 要介護認定者数:
2022年度 → 約63万人
2030年度 → 約76万人(約2割増) - 認知症高齢者数:
2022年度 → 約48万人
2040年度 → 約57万人(こちらも2割増)
これらの増加は単なる人口の高齢化にとどまらず、「医療・介護サービスの需要が確実に拡大する」ということを意味します。
生産年齢人口とのバランス
一方で、生産年齢人口(15歳~64歳)はどうでしょうか。
- 1990年 → 約876万人
- 2020年 → 約928万人(わずか6%増)
この数字を見ると、「高齢者は2.6倍に増えたのに、働き手はほとんど増えていない」というアンバランスが浮かび上がります。
つまり、これからの東京では少ない働き手で多くの高齢者を支える構図が避けられないのです。
都市部特有の事情
地方でも高齢化は進んでいますが、東京ならではの特徴もあります。
- 高齢者が「戻ってくる」
→ 地方や郊外から再び都心に移り住む人が多く、結果的に人口集中が続く。 - 生活の利便性が高い
→ 病院・介護施設・交通機関・商業施設が密集しており、高齢期の生活に有利。 - 住宅事情の難しさ
→ 家賃や物価が高く、年金収入だけでは負担が重い場合も多い。
つまり東京の高齢化は「急速に進む」だけでなく、「都市型の特殊な課題」を伴っているのです。
介護人材不足の影響
この数字が現実になったとき、最大の課題になるのが介護人材の不足です。
東京都は2030年度に約4万7000人の介護職員が足りなくなると試算されています。神奈川県でも2040年度に約4万3000人の不足が見込まれており、首都圏全体で深刻な課題です。
「必要なサービスを受けたいのに、人がいない」という状況は、誰にとっても他人事ではありません。
私たちにとっての意味
これらの数字が示す未来は、遠い話ではありません。
- 両親や親族の介護をどうするか
- 自分自身が高齢者になったときの住まいや医療の選択肢
- 費用や税負担がどうなるか
すべて、私たちの生活設計に直結するテーマです。
また「健康寿命を延ばすための生活習慣」や「介護保険の仕組みを理解しておくこと」は、将来の安心につながる自分ごとの課題でもあります。
まとめ
今回取り上げた数字から見えてくるのは、次のような現実です。
- 2065年には東京の住民の約3人に1人が高齢者
- 特に75歳以上の後期高齢者が急増する
- 要介護認定者・認知症高齢者も2割増える
- 一方で働き手の増加はほとんどなく、支える構図が厳しくなる
こうした状況は、私たちが将来どのように暮らすか、どんな社会を築くかに直結します。
次回(第3回)は、この高齢化の波が引き起こす「介護人材争奪戦」の現実に焦点を当てていきます。
📌 参考:
東京一極集中の実相(2) 人口増内訳、高齢者が9割(日本経済新聞、2025年10月1日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91639170Q5A930C2L83000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
