教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置は、令和8年3月末で終了します。
これまで最大1,500万円まで非課税で教育資金を移転できた制度は、祖父母世代からの資金支援の代表的な手段でした。
しかし制度終了は、「教育資金をどう準備するか」を根本から見直す契機でもあります。
本稿では、終了後の代替設計を体系的に整理します。
なぜ制度は終了するのか
背景には次の事情があります。
- 利用者が富裕層に偏っていたこと
- 教育費無償化の進展
- NISA制度拡充による投資型支援への政策転換
つまり、「一括移転型」から「分散・投資型」への転換が進んでいると理解できます。
代替設計① 暦年贈与の活用
最も基本的な代替手段は、暦年贈与です。
- 年間110万円まで非課税
- 早期から複数年に分散
例えば、孫が0歳から10年間、毎年100万円ずつ贈与すれば、合計1,000万円を無税で移転できます。
ポイントは、
- 毎年贈与契約書を作成する
- 孫名義口座で管理する
- 実質的な支配を移転する
形式を整えなければ、名義預金と判断されるリスクがあります。
代替設計② こどもNISAとの組み合わせ
令和9年からはこどもNISAが利用可能になります。
祖父母からの暦年贈与を原資として、
- 年60万円を投資枠に充当
- 残額を預貯金で管理
というハイブリッド設計が可能です。
教育資金一括贈与が「非課税移転」だったのに対し、
こどもNISAは「非課税運用」です。
移転と増殖の役割を分ける設計が重要です。
代替設計③ 都度贈与方式
教育費は本来、扶養義務者からの都度負担であれば贈与税は課されません。
例えば、
- 授業料
- 入学金
- 塾費用
をその都度、直接支払う方式です。
この方式は税務上最もシンプルですが、
- まとまった資金を事前確保できない
- 将来の進学計画が流動的
という弱点もあります。
代替設計④ 生命保険の活用
祖父母が契約者となり、
- 学資保険
- 一時払い終身保険
などを活用する方法もあります。
ただし、
- 受取人設定
- 贈与税課税関係
- 相続時精算課税との関係
を慎重に整理する必要があります。
保険は万能ではありませんが、世代間移転のタイミング調整には有効です。
代替設計⑤ 家族信託の検討
資産規模が大きい場合は、家族信託の活用も選択肢です。
祖父母の財産を信託財産とし、
- 教育費支出
- 生活費支援
を目的として管理する設計です。
ただし、コストや設計難易度が高いため、一般家庭向けというよりは資産家向けの選択肢です。
どの方法が合理的か
資産規模別に整理すると、
一般家庭
- 暦年贈与+こどもNISA
- 都度贈与
が現実的です。
資産家層
- 暦年贈与の長期分散
- 保険活用
- 家族信託
の組み合わせが検討対象になります。
重要なのは、「税制ありき」ではなく、
- 教育時期
- 祖父母の年齢
- 相続対策との整合性
を踏まえて設計することです。
制度終了は不利か
一括贈与制度は確かに便利でした。
しかし、
- 使途管理の煩雑さ
- 30歳到達時の残額課税リスク
- 富裕層偏重批判
という課題もありました。
制度終了は必ずしも「損」ではなく、
より柔軟な分散設計へ移行する契機ともいえます。
結論
教育資金一括贈与の終了後は、
- 暦年贈与で移転
- こどもNISAで増やす
- 都度支払いで補完
という三段階設計が基本形になります。
重要なのは、
- 移転
- 運用
- 支出
を分けて考えることです。
一括制度に依存する時代から、
分散・計画型の資金設計へ。
これが今回の制度終了が示す方向性です。
参考
・税のしるべ 2026年2月9日号
「令和8年度税制改正大綱を読む」第6回(個人所得課税③)
