このシリーズでは、子どもの誕生から大学進学までの約18年間を見据え、教育費をどのように準備し、家計全体の中でどう位置づけるかを解説してきました。
教育資金は、人生の三大支出(教育・住宅・老後)の中でも“計画できる支出”です。
「いつ・いくら必要になるか」がある程度予測できるため、早期に準備を始めるほど、家計の負担を軽減できます。
最終回では、これまでの7回の内容を振り返りながら、教育資金の考え方を一枚の“家計の設計図”として整理します。
1.教育資金の全体像
教育資金の支出は、幼稚園から大学まで段階的に発生します。
文部科学省の調査によると、大学まで公立で進んだ場合でも1,000万円前後、私立の場合は2,000万円を超えるケースもあります。
教育費の支出には「タイミング」と「ピーク」があり、特に大学進学時は入学金や授業料で大きな支出が集中します。
したがって、18年間の時間をどう使うかが勝負です。
2.「3本柱」で進める教育資金準備
教育資金の積立は、次の3つの柱で構成すると無理なく進められます。
- 児童手当の積立(基礎)
→ 約240万円を確保でき、国立大レベルの学費をカバー。 - 月1万円の定額積立(上乗せ)
→ 約18年で200万円以上、私立文系に対応可能。 - 余力による追加積立(柔軟対応)
→ 幼保無償化分やボーナス積立などで不足を補う。
この3本柱を組み合わせれば、子どもの進路に合わせて柔軟に対応できます。
3.貯蓄と投資のバランス設計
インフレが続く現代では、「貯めるだけ」では教育資金の実質価値が下がる可能性があります。
そこで、元本を守る資金と、増やす資金の2本立てが重要になります。
| 性格 | 手段 | 目的 |
|---|---|---|
| 元本を守る | 定期預金・個人向け国債・学資保険 | 確実に使える資金を確保 |
| 増やす | NISA・投資信託・iDeCo | インフレを上回るリターンを目指す |
教育資金は「いつ使うか」が明確なので、使う時期が近づいたらリスクを減らすのが鉄則です。
運用と安全のバランスを定期的に見直しましょう。
4.奨学金・教育ローンの位置づけ
すべてを貯めることが難しい場合、奨学金や教育ローンの活用も選択肢に入ります。
- 奨学金(日本学生支援機構):本人名義で借り、卒業後に返済。無利子・有利子の2種類。
- 給付型奨学金:返済不要。所得基準を満たせば支援対象に。
- 教育ローン(日本政策金融公庫など):親が借り、入学金などを一時的に補う。
ただし、借入は「将来返す力」を前提に慎重に判断することが必要です。
親がすべて背負うのではなく、家族で負担の線引きを共有しておきましょう。
5.家計全体で見た教育費の位置づけ
教育費を単独で考えるのではなく、住宅資金・老後資金との関係で捉えることが重要です。
支出のピークが重ならないよう、家計の時間軸を整理したライフプランを描いておきましょう。
| 支出項目 | 主な時期 | 家計への影響 |
|---|---|---|
| 教育費 | 0~22歳頃 | 大学入学時が最大ピーク |
| 住宅費 | 30~60歳頃 | 長期返済で教育費と重なりやすい |
| 老後資金 | 60歳以降 | 後回しにすると不足リスクが高い |
教育費に偏りすぎず、“家族全体のライフステージでバランスをとる”ことが長期安定の鍵です。
6.家計戦略を「継続できる形」にする
貯蓄や投資の計画は、始めるよりも“続けること”が難しいものです。
そこで、次の3つを実践すると、長期的に無理なく続けられます。
- 自動化:給与天引き・自動振替で意志に頼らない積立を設定。
- 可視化:目的別に口座を分け、積立状況を見える化。
- 点検化:年1回の家計点検で、積立額・投資比率を見直す。
計画的な積立は「一度決めて終わり」ではなく、「生活と共に成長する仕組み」として設計することがポイントです。
結論
教育資金づくりの本質は、“親の責任”ではなく“家族の未来への投資”です。
早めに準備を始めれば、家計の安定と子どもの進路の自由、両方を守ることができます。
18年間という時間をどう使うか――それが教育資金の成否を分けます。
「貯める・増やす・守る・話し合う」。
この4つを意識して、家族の未来を安心して描けるライフプランを整えていきましょう。
出典
- 文部科学省『子供の学習費調査(令和5年度・2023年調査)』
- 文部科学省『国公私立大学等の授業料等の推移(令和5年度)』
- 金融庁『新しいNISA(制度概要)』
- 日本学生支援機構『奨学金のご案内(令和6年度版)』
- 日本政策金融公庫『教育費負担に関する調査(2024年)』
- 総務省『家計調査年報(2023年版)』
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
