「教育資金をNISAで積み立てるのはどうですか?」
近年、この質問を受ける機会が増えました。
確かに、非課税で運用できるNISAは魅力的な制度です。しかし、教育資金は“使う時期が決まっているお金”であり、老後資金とは性格が異なります。
18年という長い時間をどう活かし、どのようにリスクをコントロールすべきか――。
ここでは、教育資金を「貯めながら増やす」ためのNISA活用法を考えていきます。
1.教育資金にNISAを使う目的を明確にする
教育資金のNISA活用で最も大切なのは、“何のために投資をするか”を明確にすることです。
たとえば、
- 児童手当をそのまま預金で積み立てると、18年間で約200万円。
- 同じ金額をNISAで平均年率3%で運用できれば、約270万円前後に増える可能性があります。
つまり、「安全に積み立てる」+「時間を使って増やす」という考え方がポイントです。
NISAは“短期で儲ける”ためではなく、“教育費を少しでも増やす”ための仕組みとして位置づけるのが現実的です。
2.NISA活用の基本ステップ
(1)運用期間を決める
教育資金の必要時期は明確です。18年間すべて投資に回すのではなく、
- 0~15歳までは積み立て期
- 15~18歳は取り崩し準備期
と段階的にリスクを下げる設計が理想です。
(2)投資対象を選ぶ
教育資金向きの投資信託は、次のような“広く分散されたタイプ”が基本です。
- 全世界株式インデックスファンド
- バランス型(株+債券)ファンド
値動きが安定し、長期的な成長が期待できるものを選びましょう。
(3)積立金額を決める
「月1万円」の積み立てでも18年あれば216万円。
運用がうまくいけば250万円を超える可能性があります。
児童手当(18年間で約200万円)と合わせれば、大学費用の半分以上を自力で用意できる計算です。
3.リスク管理のポイント
● 投資は“全部”ではなく“一部”で
教育資金のすべてを投資に回すのはリスクが高い行動です。
例えば、「教育資金のうち3割はNISA、7割は貯蓄・国債」というように分けておくことで、相場変動に左右されず安心して進学資金を準備できます。
● 使う時期が近づいたら“守り”へ
大学進学の3年前になったら、徐々に投資信託を売却して現金化するか、定期預金に移すなど“守る運用”に切り替えましょう。
投資は「出口戦略」を持つことが成功の条件です。
● 親のNISAで積み立てる
教育資金は親名義のNISA口座で運用します。
目的別にファンドを分けておけば、老後資金や生活防衛費と混在せず管理できます。
例:
- Aファンド → 教育資金
- Bファンド → 老後資金
とラベルを付けて整理しておくとわかりやすいです。
4.貯蓄と投資のバランス設計
教育資金にNISAを活用する際は、「貯蓄で基盤をつくり、投資で上乗せを狙う」設計が理想です。
| 資金の性格 | 方法 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 安全資金 | 定期預金・国債 | 元本保証・使いやすい | 利回りは低い |
| 成長資金 | NISAの積立投信 | インフレに強く、複利効果 | 値動きリスクあり |
投資の比率を増やすのは、準備期間が長いほど有利です。
逆に、進学まで残り5年を切ったら、値動きのある商品よりも「確実に使えるお金」を優先しましょう。
結論
教育資金にNISAを取り入れることは、「長期・分散・積立」の原則を実践する絶好の機会です。
ただし、教育費は“使う時期が決まっている”特別なお金であることを忘れてはいけません。
貯蓄と投資をうまく組み合わせて、18年後に安心して子どもを送り出せる仕組みを今から整えておきましょう。
未来の教育資金は、“計画性”と“時間”が何よりの味方になります。
出典
- 金融庁『新しいNISA(制度概要・Q&A)』
- 文部科学省『子供の学習費調査(令和5年度・2023年調査)』
- 文部科学省『国公私立大学等の授業料等の推移(令和5年度)』
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
