教育費と資産運用~インフレ時代に備える“実質価値の守り方”~

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子どもの教育費は、長期間にわたって積み立てていく性質の支出です。
そのため、近年のように物価や学費が上昇する環境では、「せっかく貯めた教育資金の実質的な価値が目減りしてしまうのでは」と心配する声も増えています。

銀行預金の金利が0.001%台にとどまる一方、大学授業料や生活費は年々上昇傾向にあります。
この「インフレ環境」で教育資金をどう守り、どう育てるか――今回はその考え方を整理します。

1.インフレが教育資金に与える影響

インフレとは、モノやサービスの価格が継続的に上がる状態のことです。
教育費も例外ではなく、大学授業料や教材費、通学費などは少しずつ上昇しています。

たとえば、国立大学の授業料は1990年代に約35万円だったものが、現在では約54万円。
私立大学の平均授業料も30年前に比べて約3割上昇しています。

一方で、普通預金の金利は30年前の3%前後から、いまや0.001%台。
つまり、預金に置いたままではお金の価値が相対的に下がってしまうのです。

この“見えない目減り”を防ぐには、インフレに強い資産運用を取り入れることが欠かせません。


2.教育資金の「守る」と「育てる」を両立する

教育資金は、使う時期が決まっている点で老後資金とは異なります。
だからこそ、「元本を守る部分」と「インフレに備える部分」のバランスが大切です。

目的性格手段留意点
元本を守る近い将来使うお金定期預金・個人向け国債安全性重視。利率は低いが確実。
価値を守る長期で使うお金NISA・積立投信インフレを上回る成長を目指す。

教育資金のうち、数年以内に使う分は元本保証型で確実に確保し、
10年以上先に使う分は、投資信託やNISAで「育てるお金」として運用する。
この二段構えが、インフレ下での教育資金設計の基本です。


3.インフレに強い運用の考え方

教育資金を増やす目的で投資を行う場合、「高リターンを狙う」よりも「インフレに負けないリターンを得る」ことが目標になります。
そのために有効なのが、分散投資と長期積立の2つです。

(1)分散投資

国内株式だけでなく、先進国株式・新興国株式・債券などに分散することで、特定の市場の値動きに左右されにくくなります。
教育資金では、全世界株式型やバランス型ファンドを選ぶと管理しやすいでしょう。

(2)長期積立

時間をかけて積み立てることで、価格変動の影響を平均化できる「ドルコスト平均法」が機能します。
インフレが続いても、定期的に積み立てることで平均購入価格が安定し、長期的な成長を取り込みやすくなります。


4.NISAを教育資金に活かす

新しいNISA制度では、年間360万円まで非課税で投資でき、非課税保有期間も無期限となりました。
教育資金のように長期で使うお金には非常に相性が良い仕組みです。

親名義でNISA口座を開設し、教育資金専用の投資信託を設定することで、運用益を非課税で積み立てられます。
ただし、使う時期が近づいたら無理にリスク資産を持ち続けず、3~5年前から安全資産へシフトするのが鉄則です。


5.「金額」ではなく「実質価値」で考える

将来の教育費は、単に「金額をいくら貯めるか」ではなく、「そのお金でどれだけの教育を受けられるか」という実質価値の視点で考える必要があります。
たとえば、同じ300万円でも、物価が10%上がれば実質的な購買力は270万円程度になります。

したがって、貯蓄額の目標を設定するときは、「物価上昇率を年1~2%見込む」想定を入れておくと安心です。
教育資金の将来価値を守るには、“貯めるだけでは不十分”という前提で動くことが求められます。


結論

インフレ時代の教育資金づくりは、
「お金の額」ではなく「お金の価値を保つ」ことを意識することから始まります。

元本を守るための安全資産と、実質価値を保つための運用資産。
この2つを組み合わせて、時間を味方につけながら教育費を準備することが、子どもの将来を安心して支える最良の方法です。


出典

  • 文部科学省『国公私立大学等の授業料等の推移(令和5年度)』
  • 日本政策金融公庫『教育費負担に関する調査(2024年)』
  • 金融庁『新しいNISA(制度概要)』
  • 総務省『消費者物価指数年報(2024年)』

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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