教育費と家計管理~“使うために貯める”逆算貯蓄のすすめ~

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教育資金の準備では「どのくらい貯められるか」よりも、「いつ、いくら使うか」を意識することが重要です。
多くの家庭では、漠然と“貯めなければ”と考えながら、具体的な使い道や時期を想定せずに積み立てを続けているケースが少なくありません。

しかし、教育資金は「使う時期が決まっているお金」です。
だからこそ、目的から逆算して計画的に貯める「逆算貯蓄」が有効になります。

1.教育費は“長期イベント”ではなく“複数の支出の連続”

教育費というと、大学進学時に一気に支出するイメージを持たれがちですが、実際には段階的な支出の積み重ねです。

幼稚園・保育園、小学校、中学校、高校、大学と続く中で、それぞれのタイミングで

  • 入学金・制服代などの初期費用
  • 修学旅行・部活動・教材費などの臨時支出
    が発生します。

つまり、教育費は「18年間のマラソン」のようなものであり、数年ごとに支出の波が来る構造です。
したがって、「いつ・いくら必要になるか」を整理することで、家計の年間計画も立てやすくなります。


2.逆算貯蓄の考え方

逆算貯蓄とは、将来の支出時期と金額から逆に割り出して積み立てを行う方法です。
具体的には次の3ステップで考えます。

  1. 目標時期と金額を明確にする
     例:大学入学時に300万円を用意したい
  2. 残り期間を確認する
     例:現在お子さんが3歳 → 残り15年
  3. 月あたりの積立額を算出する
     300万円 ÷(15年×12カ月)=約1万7000円

このように、目標から逆算すれば「必要な積立額」が明確になり、家計全体のバランスを保ちながら計画的に貯めることができます。


3.「貯める口座」と「使う口座」を分ける

教育費は生活費と混在させると、目的があいまいになりがちです。
そのため、貯めるための専用口座を用意し、

  • 毎月の定額積立(定期預金など)
  • ボーナス時の追加入金
  • 児童手当や祝い金の自動入金
    などを設定しておくと管理が容易になります。

大学進学などの“使うタイミング”が近づいたら、使う側の口座へ段階的に移動させることで、資金の出入りが明確になります。


4.積立方法の組み合わせ方

逆算貯蓄では「すべてを貯蓄で」「すべてを投資で」と考えるのではなく、目的と期間によって組み合わせるのがポイントです。

目的期間手段備考
1~3年以内に使う短期定期預金・普通預金元本確保を最優先
5~10年先に使う中期積立定期+個人向け国債安全性と利回りのバランス
10年以上先に使う長期NISA・積立投信時間を味方につけた成長資金

時間が味方になるほど、投資を取り入れる意義が大きくなります。
ただし、進学が近づいたら段階的に現金化し、確実に使える状態へ移すことを忘れないようにしましょう。


5.教育資金と老後資金を分けて考える

教育資金と老後資金は、どちらも将来のための積立ですが、使う時期が重ならないだけで同じ財布から出るお金です。
教育費に偏りすぎると、老後の生活資金が不足する可能性もあります。

「教育費はどこまで出すのか」「どこからは本人に任せるのか」――家族であらかじめ線を引いておくことで、老後の不安を抱えずに教育を支援できます。
教育資金も老後資金も、“限られた収入をどう配分するか”という家計設計の一部なのです。


結論

教育費は、時間をかけて準備できる「予測可能な支出」です。
その強みを生かすためには、漠然と貯めるのではなく、「使う時期」から逆算して貯める発想が欠かせません。

“使うために貯める”という意識を持ち、目的別に積立を整理すれば、教育資金と老後資金を両立させながら安心して将来を迎えられます。


出典

  • 文部科学省『子供の学習費調査(令和5年度・2023年調査)』
  • 文部科学省『国公私立大学等の授業料等の推移(令和5年度)』
  • 金融庁『家計の見直しに関する基礎データ(教育費関連)』
  • 日本政策金融公庫『教育費負担に関する調査(2024年)』

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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