改正下請法が適用されるフリーランス/されないフリーランス――境界線を誤解すると制度は使えない

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改正下請法(中小受託取引適正化法)の施行により、フリーランスにも新たな保護が及ぶ可能性が出てきました。しかし実務の現場では、「自分は対象なのか分からない」「フリーランス新法とどう違うのか」という戸惑いが多く見られます。

改正下請法は、フリーランスという働き方そのものを直接対象にしているわけではありません。あくまで取引の構造と当事者の規模関係によって適用が決まります。本稿では、どのようなフリーランスが改正下請法の対象となり、どのような場合は対象外となるのか、その境界線を整理します。

改正下請法の基本構造

改正下請法は、発注側と受注側の間に「規模の格差」があり、発注側が優越的な立場にある取引を想定しています。

ポイントは二つです。
一つ目は、取引の内容が法の対象となる委託であること。
二つ目は、発注側と受注側の規模関係が要件を満たしていることです。

フリーランスか法人かという区分は、本質的な判断基準ではありません。

適用されるフリーランス① 情報成果物作成委託を受けている

改正下請法の対象には、プログラム作成、デザイン、原稿作成などの「情報成果物作成委託」が含まれます。

ITエンジニア、デザイナー、ライター、映像制作者などのフリーランスは、この類型に該当する可能性があります。
業務内容が成果物ベースであり、発注側が事業として委託している場合には、フリーランスであっても対象になり得ます。

適用されるフリーランス② 発注側が一定規模以上の事業者

改正下請法では、発注側の規模要件が重要です。
製造委託や情報成果物作成委託の場合、発注側が従業員300人超、受注側が300人以下であれば、原則として適用対象となります。

個人事業主であるフリーランスは、受注側の要件を満たすため、発注側が中堅・大企業であれば、制度の射程に入る可能性があります。

適用されるフリーランス③ 実質的に価格決定権を持たない取引

契約書の形式にかかわらず、実質的に価格や条件を発注側が一方的に決めている場合、改正下請法の趣旨に合致します。

「提示された条件を受けるか断るかしかない」取引関係は、典型的な適用場面といえます。
フリーランスであっても、対等な交渉が成立していない場合には、法の想定する構造に当てはまります。

適用されないフリーランス① 発注側が小規模事業者

発注側が中小・小規模事業者であり、規模の格差が明確でない場合、改正下請法の適用対象外となる可能性が高くなります。

たとえば、同規模のフリーランス同士や、小規模法人からの委託の場合、制度は基本的に介入しません。
この場合は、フリーランス新法や民事契約の枠組みでの対応が中心になります。

適用されないフリーランス② 役務提供そのものが主な取引

改正下請法は、「成果物」や「再委託」を前提とした取引を想定しています。
単純な労務提供や、時間単位での役務提供に近い取引は、対象外となる場合があります。

たとえば、単発の業務支援やアドバイス業務などは、情報成果物作成委託に該当しないケースがあります。

適用されないフリーランス③ 実質的に対等な交渉が行われている

価格や条件について、双方が対等に交渉し合意している取引は、改正下請法の問題意識から外れます。

フリーランスであっても、専門性や代替困難性が高く、価格決定に主体的に関与している場合には、「優越的地位の濫用」という構図が成立しにくくなります。

フリーランス新法との使い分け

改正下請法が適用されない場合でも、フリーランス新法の対象となる可能性はあります。
契約条件の明示や支払期日の確保といった最低限のルールは、引き続き重要です。

一方、価格協議の拒否や一方的な条件決定といった問題については、改正下請法が適用されるかどうかで対応の幅が大きく変わります。
両制度は排他的ではなく、状況に応じて使い分ける視点が不可欠です。

結論

改正下請法が適用されるかどうかは、「フリーランスかどうか」では決まりません。
取引内容と規模関係、そして実質的な力関係によって判断されます。

自分がどの制度の射程に入っているのかを正しく理解することが、実務対応の出発点です。
適用される場合には、価格協議を求める権利が明確になりますし、適用されない場合でも、別の制度や契約実務で補う必要があります。

制度を正確に使い分けられるかどうかが、フリーランスの交渉力を左右する時代に入っています。

参考

・日本経済新聞「改正下請法きょう施行 政府、価格転嫁の監視強化」(2026年1月1日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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