前回の記事では、企業が福利厚生として導入する「団体長期障害所得補償保険(GLTD)」の広がりを紹介しました。
今回は、それと混同されやすい「個人加入型の所得補償保険」との違いを整理します。
個人加入型「所得補償保険」とは?
生命保険会社や損害保険会社が販売している商品で、個人が自分で加入するものです。
- 病気やケガで働けなくなった場合に、月々の生活費を補償
- 加入金額(補償額)や給付期間を自分で選べる
- 保険料は加入者自身が負担
主に「自営業者」「フリーランス」「会社員でも福利厚生が手薄な人」が利用します。
例えば、1日でも長期入院や就業不能になると家計への影響が大きいため、住宅ローン利用者が加入するケースも多いです。
企業導入型「GLTD」とは?
一方、GLTDは企業が契約し、従業員を包括的にカバーする仕組みです。
- 保険料は基本的に会社負担(または従業員と折半)
- 補償割合は「給与の50〜60%」が一般的
- 定年まで継続する長期補償が可能
- 勤続年数や退職による不利が少ない
福利厚生の一環で導入されるため、従業員個人が保険料を全額負担する必要がありません。
2つの違いを整理すると…
| 項目 | 個人加入型 | 企業導入型(GLTD) |
|---|---|---|
| 契約者 | 本人 | 企業 |
| 保険料負担 | 本人 | 企業(または折半) |
| 補償額 | 自分で設定 | 年収の一定割合(50〜60%) |
| 給付期間 | 数年〜最長65歳など商品により異なる | 定年まで |
| 加入条件 | 健康状態や職業により制限あり | 企業契約に基づき原則全員加入 |
| メリット | 自分の希望に合わせられる | 割安で長期補償、転職者にも安心 |
| デメリット | 保険料が高くなりやすい | 会社が導入していなければ加入不可 |
税理士・FPの視点
個人加入型は「加入者が自由に設計できる」点がメリットですが、保険料負担が重くなりやすいのが課題です。
一方GLTDは「企業が導入しているかどうか」がカギで、導入企業に勤めていれば非常に有利な制度となります。
つまり、
- 個人加入型は“自己防衛策”
- GLTDは“企業による安心の提供”
と整理するとわかりやすいでしょう。
まとめ
- 所得補償保険には「個人加入型」と「企業導入型GLTD」の2種類がある
- 個人型は自由度が高いが保険料は自己負担
- GLTDは会社が契約するため割安で、長期的に安心できる
転職活動や就職先選びの際にも「GLTDがあるかどうか」は見逃せない福利厚生ポイントになりつつあります。
👉 次回(第3回)は、**GLTDや所得補償保険の「税制・社会保険上の扱い」**について詳しく解説していきます。
(参考 2025年9月9日付 日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
