惑う30代の家計(中)住宅価格の高騰と“持ち家後退”が示す新たな現実

FP
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長らく「結婚・出産期に住宅を購入する」というモデルが一般的でした。しかし今、住宅価格の高騰や家計負担の集中により、このモデルが成立しづらくなっています。特に東京圏では新築マンション価格の上昇が顕著で、住宅購入のハードルは過去にないほど高まっています。

本稿では、住宅取得の現状を整理し、住宅購入か、賃貸か、実家資産の活用かという選択肢を考える際のポイントを解説します。

1. 住宅価格の上昇が30代の「持ち家率」を押し下げる

総務省の住宅・土地統計調査によると、
30代後半の持ち家率は40年で約16ポイント低下
しています。

・1983年:60.1%
・2023年:44.1%

住宅価格高騰により、かつての「30代は家を買う時期」というモデルは大きく変化しています。

2. 高騰する新築マンション、郊外でも7000万円時代

東京23区では新築マンションの平均価格が1億円に迫り、郊外でも7000万円を超えるケースが続出しています。

30歳の女性は、新築購入を諦め、築20年超の実家マンションをリフォームして居住しています。
・ローン返済:月10万円
・以前の家賃:月20万円
・新築購入なら7000万円台

このように、住宅取得は最初から「新築以外の選択肢」を考える時代へ移行しています。

3. 住宅選びとライフプランの複雑化

住宅取得が難しくなる中、30代は次のような選択に迫られます。

(1)賃貸を続けるか、購入するか

家賃高騰も進む中、どちらが得とは一概に言えません。
家計の総支出・世帯収入の伸び方・教育費の発生時期など、複数の要因が絡みます。

(2)広さ・立地より「総支出」を優先する

教育費が早まり、住宅費も増えているため、
・立地の妥協
・中古物件の検討
・リフォーム活用
など柔軟な判断が求められます。

(3)実家不動産の活用という選択

築年数の古い実家のリフォームは、
・初期費用を抑えられる
・生活環境が変わりづらい
・祖父母の支援が得やすい
といったメリットがあります。


結論

住宅取得の厳しさは30代のライフプランを大きく左右しています。教育費の前倒しと重なり、住宅購入のタイミングは従来より慎重に見極める必要があります。

「買うか・借りるか」ではなく、
・中古・リフォーム
・実家活用
・生活圏の見直し
などを含めた総合的な選択が求められています。住宅選びは家計全体の“負担バランス”を考えることが最も大切です。


出典

・日本経済新聞「惑う30代 成長の盲点(中)」
・総務省「住宅・土地統計調査」
・不動産関連公開資料

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