役割を果たせなかった党税調――2026年度税制改正をどう評価するか

政策
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

税制改正は、毎年の予算編成の中でも国民生活に最も直接的な影響を与える政策分野の一つです。とりわけ所得税や消費税、エネルギー課税などは、家計や企業活動に即座に影響します。本来、税制は公平・中立・簡素という三つの原則に基づき、安定的な財源を確保するために設計されるべきものです。

しかし、2026年度税制改正を振り返ると、財源確保の面でも制度設計の面でも、多くの課題が残ったと言わざるを得ません。その背景として指摘されているのが、与党税制調査会、いわゆる党税調の機能低下です。本稿では、税制決定の仕組みを整理したうえで、2026年度税制改正を検証し、今後求められる税制議論の方向性について考えます。

税制改正と党税調の本来の役割

日本の予算編成では、歳出は各省庁の予算要求を財務省が査定し、政治判断を経て決定されます。一方、歳入、すなわち税制については、各省庁からの税制改正要望を最終的に査定する役割を、長らく自民党の税制調査会が担ってきました。

党税調は、短期間で異動する官僚とは異なり、長年税制に携わる政治家が中心となり、業界利害を超えて是非を判断する存在とされてきました。その結果、ときには国民にとって厳しい選択であっても、財源確保や税の原則を優先する決定を下してきた歴史があります。このため、首相以上の影響力を持つと評された時代もありました。

官邸主導への転換と党税調の変質

この構図を大きく変えたのが、安倍政権期の官邸主導の税制決定です。消費税率10%への引き上げ時に導入された軽減税率は、党税調主導ではなく、官邸判断で進められた象徴的な事例といえます。

その後、政権交代を経て一時的に党税調の影響力は回復しましたが、現在の高市政権では再び官邸主導へと舵が切られました。官邸主導そのものが直ちに問題というわけではありませんが、今回の問題は、新体制下で党税調の財源調達機能や原則重視の判断力が十分に発揮されなかった点にあります。

2026年度税制改正に見る財源問題

2026年度税制改正で最大の課題の一つが、ガソリン税の旧暫定税率廃止に伴う約1兆5千億円の財源確保でした。与野党合意では、法人関係の租税特別措置の見直しや、高所得者層への負担強化などで安定財源を確保するとされていました。

しかし、実際に確保できた増収は約6千億円にとどまり、廃止に伴う減収を十分に補うには至っていません。また、年収の壁見直しによる約7千億円規模の国税減収についても、明確な補填策は示されませんでした。結果として、歳入減を将来世代への負担に先送りする形となっています。

税の三原則から見た制度評価

内容面では、評価できる点もあります。金融所得に関するいわゆる1億円の壁への対応や、基礎控除への物価調整メカニズム導入は、負担の公平性を一定程度高めるものといえます。

一方で、年収の壁を178万円まで引き上げる措置は、低所得者よりも中所得者に手厚い減税となり、公平性の観点で疑問が残ります。また、複数の特例や経過措置が重なり、制度は一層複雑になりました。これは簡素という税の基本原則にも反するものです。暫定措置とされている以上、今後は給付付き税額控除など、より公平で分かりやすい制度への整理が不可欠です。

結論

税制の最大の役割は、公共サービスを支える安定した財源を確保することです。そのためには、政治的な人気取りではなく、公平・中立・簡素という原則に立ち返った議論が欠かせません。

2026年度税制改正は、官邸主導の下で一定の政策判断が迅速に行われた一方、財源確保や制度設計の面で党税調の本来の役割が十分に果たされたとは言い難い内容でした。今後、積極財政への懸念が高まる中だからこそ、官邸から一定の距離を保ち、税の原則と財源調達機能を重視する党税調の再構築が求められています。

参考

・日本経済新聞「役割を果たせなかった党税調」2026年1月7日朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました