iDeCoやNISAは、長期の資産形成に適した制度です。
しかし、年金の受給が始まる前後で、これまでと同じ資産配分を続けることが最適とは限りません。
資産形成のステージは、
「積み立て期」から「取り崩し期」へ
確実に移行していきます。
本稿では、年金受給前後において、iDeCo・NISAをどのように組み替えて考えるべきかを整理します。
年金受給前後で何が変わるのか
年金受給を境に、資産管理の前提条件は大きく変わります。
具体的には、
・毎月の年金という安定収入が発生する
・給与収入が減少、または終了する
・生活費の補填として資産を使う局面に入る
という変化です。
この段階では、「いくら増えるか」よりも「どのタイミングで使うか」が重要になります。
iDeCoは「出口」を最優先で考える
iDeCoは、受給方法を一時金・年金・併用から選択できます。
そのため、受給開始時点の資産評価額が、将来の税負担や生活設計に直結します。
年金受給前後に意識すべき点は、
・受給直前の大きな価格変動リスク
・一時金受給時の課税関係
・年金受給の場合の受給期間中の運用
です。
受給が近づいた段階では、価格変動の大きい資産に偏りすぎない配分へ徐々に調整していく必要があります。
NISAは「流動性の高い資金置き場」として再設計
NISAは、いつでも売却できる点が特徴です。
年金受給前後では、この自由度を「生活費の調整弁」として活用する考え方が重要になります。
例えば、
・生活費の不足分を補う
・一時的な支出(医療・住宅修繕など)に備える
といった役割を持たせることで、iDeCoを無理に動かさずに済みます。
NISAは「増やすためだけの制度」から「使うための準備口座」へと役割が変わります。
iDeCoとNISAの役割分担を見直す
年金受給前後では、両制度の役割を明確に分けることが重要です。
一例として、
・iDeCo:老後資金の土台、計画的に受け取る資金
・NISA:柔軟に使える調整資金
という整理が考えられます。
この役割分担が曖昧なままだと、どちらを取り崩すべきか判断がつかず、結果的に不安定な運用や売却判断につながります。
「取り崩し順序」を意識した配分へ
年金受給後は、資産を一括で使うのではなく、段階的に取り崩していくことになります。
そのため、どの資産から使うかを前提に配分を考える必要があります。
・近い将来に使う資金:価格変動を抑えた資産
・しばらく使わない資金:一定の成長を期待できる資産
という時間軸の分け方が有効です。
「すべてを同じリスクで持ち続ける」考え方から脱却することが求められます。
年金は「最も安定した分散資産」と捉える
見落とされがちですが、公的年金そのものも重要な資産です。
しかも、物価スライドや終身給付という特徴を持つ、非常に安定した収入源です。
年金があるからこそ、
・資産全体では多少のリスクを取れる
・短期の相場変動に過度に反応しなくて済む
という側面もあります。
年金を含めた「全体の収入構造」を見た上で、iDeCo・NISAを配置する視点が欠かせません。
結論
年金受給前後は、iDeCo・NISAを「積み立ての延長」で考えてはいけない局面です。
資産形成から資産活用へと、明確なフェーズ転換が求められます。
重要なのは、
・iDeCoは出口と税を意識して安定化
・NISAは流動性を活かして調整役に
・年金を含めた全体設計で考える
という視点です。
年金受給はゴールではなく、資産管理の新しいスタート地点であることを意識する必要があります。
参考
・日本経済新聞「個人投資家、分散投資進む」
・iDeCo制度および公的年金制度に関する公表資料
・老後資金の取り崩し設計に関する金融教育資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

