年金世代から見た「有料相談」の現実性――お金を払ってでも相談する時代は来るのか

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生活や資産に関する相談を、金融商品の販売から切り離し「有料サービス」として提供すべきだ、という議論が広がりつつあります。
理屈としては理解しやすい一方で、年金世代の視点に立つと、「本当にお金を払ってまで相談するだろうか」という疑問が浮かびます。
日本では長らく、金融相談は無料であることが当たり前でした。その前提が崩れつつある今、有料相談は現実的な選択肢になり得るのでしょうか。

年金世代は「無料相談」に慣れすぎてきた

多くの年金世代にとって、金融機関での相談は「窓口で無料で聞けるもの」でした。
住宅ローン、保険、投資信託――いずれも相談料を払う意識はなく、その代わりに商品手数料が上乗せされている構造が見えにくいまま、長年利用されてきました。
この経験があるため、「相談にお金を払う」という発想自体に、強い違和感を覚える人は少なくありません。

それでも不安は「無料」では解消できない

一方で、年金世代が抱える不安は年々複雑化しています。
年金額の見通し、医療・介護費、認知症リスク、配偶者の死亡後の生活、相続や贈与のタイミングなど、単発の質問では済まない問題が増えています。
こうしたテーマは、商品を売る前提の無料相談では十分に扱いきれません。結果として、「結局よく分からないまま不安だけが残る」という状況に陥りがちです。

年金世代が求めているのは「結論」ではない

年金世代の相談で特徴的なのは、「何を買えばいいか」という結論よりも、「この先、生活は大丈夫なのか」という確認を求めている点です。
つまり、答えそのものよりも、考え方や見通しを整理してもらうことに価値があります。
この価値は、金融商品とは直接結びつかないため、無料サービスとして提供し続けることには無理があります。

「有料=高額」という誤解

有料相談に対する最大の誤解は、「高額な費用を請求されるのではないか」という不安です。
しかし、年金世代にとって現実的なのは、数十万円の包括契約ではなく、時間単位やテーマ別の相談です。
例えば、年金・医療・介護を含めた生活設計を一度整理する、相続・贈与の考え方を確認する、といった限定的な相談であれば、負担感は大きく変わります。

「安心を買う」という消費行動

年金世代は、若い世代に比べてリスクを取らない一方、「安心」にはお金を使う傾向があります。
健康診断、人間ドック、見守りサービス、身元保証サービスなどが広がっているのは、その表れです。
生活や資産に関する相談も、「将来不安を軽減するサービス」と位置づけられれば、有料であっても受け入れられる余地は十分にあります。

有料相談が成立する条件

年金世代にとって有料相談が現実的になるためには、いくつかの条件があります。
第一に、金融商品の販売と明確に切り離されていること。
第二に、相談の範囲と料金が分かりやすいこと。
第三に、一度きりではなく、必要なときに戻れる関係性があること。
これらが欠けると、「結局、売り込みなのではないか」という疑念が拭えません。

デジタル活用が「価格の壁」を下げる

有料相談を普及させるうえで、AIなどのデジタル技術は重要な役割を果たします。
定型的なシミュレーションや制度説明をデジタルで補完することで、人が対応する時間を本当に必要な対話に集中させることができます。
その結果、相談料を現実的な水準に抑えつつ、質を維持することが可能になります。

結論

年金世代にとって「有料相談」は、決して非現実的なものではありません。
ただし、それは投資を勧めるための前段階ではなく、生活不安を整理し、安心を得るためのサービスとして位置づけられる必要があります。
無料相談では解消できない不安があるからこそ、有料相談には意味があります。
今後は、「何を買うか」ではなく、「どう生きるか」を支える相談が、年金世代の新しい選択肢になっていくと考えます。

参考

・日本経済新聞「生活・投資相談の体制を整備せよ」
・金融庁 高齢期の資産形成・管理に関する資料
・総務省 家計調査・高齢者世帯の消費動向


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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