年収の壁の見直しが相次ぎ、働き方を改めて考える家庭が増えています。
所得税の壁は引き上げられ、社会保険の扶養判定も緩和されつつあります。一方で、制度が変わっても「家事・育児の負担」や「家族の理解」が追いつかず、壁を越える決断ができない人も少なくありません。
年収の壁は、税や社会保険の問題であると同時に、家族のあり方や将来設計の問題でもあります。本稿では、家族の役割分担と老後リスクの視点から、年収の壁をどう捉えるべきかを整理します。
年収の壁と扶養の基本構造
年収の壁とは、一定の収入を超えることで税金や社会保険料の負担が生じる境目を指します。
近年は制度改正により、所得税がかからない年収水準は引き上げられました。また、社会保険の扶養判定についても、残業代を除外するなど柔軟な運用が始まっています。
これにより「壁を越えずに働く」選択肢は広がりましたが、同時に「壁を越えて働く」ことの意味も改めて考える必要があります。
家事・育児の固定化が壁を厚くする
扶養内で働く理由として多いのが、家事・育児・介護の負担です。
家庭内で役割が固定されていると、働く時間を増やす余地は限られます。
最近では、家族を一つのチームとして捉え、家事や育児を分担する考え方が注目されています。
特定の人が「家事の専門家」になるのではなく、家族全員が基本的な家事スキルを持つことで、働き方の選択肢が広がります。
また、家事の完成度を下げる、外部サービスを活用するなど、「完璧を目指さない」姿勢も重要です。
将来の働き方を家族で共有する意味
年収の壁を越えるかどうかは、目先の手取りだけで判断すべきものではありません。
将来どのように働きたいのか、どのような生活を送りたいのかを家族で共有することが欠かせません。
事前に希望を伝えていれば、家族も役割分担や協力の準備ができます。
これは夫婦間に限らず、子どもを含めた家族全体で考えることで、家庭内の理解が深まります。
扶養にとどまり続ける老後リスク
扶養に入っている間は、社会保険料の負担がなく、短期的にはメリットが大きく見えます。
しかし、長期的に見ると老後リスクが存在します。
配偶者を亡くした場合、遺族年金だけでは生活費が不足するケースも多く、低年金に陥りやすいのが現実です。
今後は遺族厚生年金の給付期間が制限される方向で制度改正が進んでおり、配偶者に依存した設計はリスクが高まっています。
年収の壁を越えることの本当の意味
扶養を抜けて厚生年金に加入すれば、保険料負担は生じますが、老後の年金額は増えます。
また、収入の増加だけでなく、社会とのつながりや自己肯定感の向上といった効果もあります。
年収の壁を越えることは、「税金が増える」という単純な話ではなく、将来の選択肢を広げる行為と捉えることができます。
結論
年収の壁は、制度だけを見て判断すると誤りやすいテーマです。
家族内の役割分担、将来の働き方、老後の生活設計を含めて考える必要があります。
家族をチームとして捉え、完璧を求めず、将来の希望を共有する。
その積み重ねが、年収の壁を越えるかどうかの判断を、前向きなものにしてくれます。
参考
・日本経済新聞「年収の壁越え『チーム家族』で」
・日本経済新聞「『扶養』老後にリスクも」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

