パート・アルバイト・共働き世帯にとって、「年収の壁」は毎年の悩みどころです。
特に年末は、給与収入が確定に近づき、今の働き方で壁を越えてしまうのか、越えない方が得なのかを判断しやすい時期になります。
2025年は税制改正で非課税枠の見直し議論も進み、“壁の位置”が変わる可能性も出ています。
本記事では、初心者でも分かりやすいように、税の壁と社会保険の壁を分けて整理し、年末に何を確認すべきかを具体的に解説します。
1. 「年収の壁」は2種類ある
ニュースやSNSで話題になる「年収の壁」ですが、実は次の2つが混同されやすいことが混乱の原因です。
- 税の壁（所得税・住民税）
- 社会保険の壁（健康保険・年金）
それぞれ仕組みが異なり、「越えると損をする」という意味も異なります。
年末に正しく判断するには、まずはこの区別が大切です。
2. 税の壁：主なラインは「103万円」「130万円」
(1) 年収103万円の壁（所得税）
給与収入103万円以下なら、配偶者の扶養に入りつつ、自分の所得税はかかりません。
- 給与所得控除55万円
- 基礎控除48万円
合計103万円のラインが生まれます。
(2) 年収130万円の壁（住民税・扶養控除）
年収130万円を超えると、住民税が発生し、配偶者の扶養控除も変化します。
扶養控除が減ると、世帯全体の手取りにも影響が出ます。
年末に給与明細を確認し、現在の年収見込みを把握することが重要です。
3. 社会保険の壁：最も負担が大きい“106万円・130万円”
税よりも大きな影響を与えるのが、社会保険の壁です。
(1) 106万円の壁（従業員数101人以上の会社で働く場合）
次の条件に該当すると、週20時間以上の勤務で社会保険に加入します。
- 従業員101人以上の企業
- 年収約106万円以上
- 雇用期間2か月超
- 学生でない
加入すると、健康保険と厚生年金の保険料を自分と会社で折半して支払います。
結果として、手取りが一時的に減ることが多いため注意が必要です。
(2) 130万円の壁（従業員100人以下の会社・扶養内）
年収130万円を超えると、原則として社会保険に加入し、扶養から外れます。
この場合も、手取りが数万円レベルで変わることがあります。
4. 壁を“越えるべきかどうか”は、年末に判断すると失敗しにくい
年末は、次の理由で壁の判断がしやすい時期です。
- 年収の見込み額がほぼ確定する
- 1年分の勤務時間・シフト状況が出そろう
- 扶養控除や社会保険料の変動額を試算しやすい
- 翌年の生活費・教育費の見通しが立てやすい
判断の目安としては、
（A）「年収を抑える」方が得なパターン
- 106万円直前で止めた方が社会保険料分の手取りが大きい
- パート主婦が配偶者の扶養に入り続けたい
- 受験・育児などで働く時間を増やせない時期
（B）「壁を越える」方が得なパターン
- 年収150万円〜160万円以上働ける見込みがある
- 将来の年金を増やしたい
- 扶養だけに頼らず働ける状態を作りたい
壁の直前で止めるか、思い切って超えるかは、世帯全体の手取りで判断するのが大切です。
5. 年末に行うべき“壁チェック”の実践ポイント
次の項目を順にチェックすれば、年末の判断がスムーズにできます。
① 現時点の年収見込みを確認
給与明細の総支給額＋12月の勤務予定で計算できます。
② 税の壁・社会保険の壁のどれに該当するかを確認
103万／106万／130万のどれに近いかをチェックします。
③ 扶養に入る・外れる場合の手取りをざっくり試算
社会保険料の負担が増える場合は特に注意。
④ 年内に勤務日数・時間を微調整する
壁をまたぐかどうかは、年末の調整が最も効果的です。
⑤ 年明け以降の働き方の見通しも考えておく
育児・介護・受験など家庭の状況も踏まえると判断がぶれません。
結論
年収の壁は複雑に見えますが、ポイントは次の3つに整理できます。
- ① 「税の壁」と「社会保険の壁」はまったく別物
- ② 影響が大きいのは社会保険（106万円・130万円）
- ③ 年末は働き方を調整しやすく、最も判断がしやすい時期
年末のタイミングで年収と勤務状況を確認し、“壁の手前で止めるのか、あえて越えて将来の年金を増やすのか”を世帯全体の手取りで判断することが大切です。
無理のない範囲で、今年の働き方の仕上げに役立ててください。
出典
・国税庁「給与所得者の所得税」
・厚生労働省「社会保険加入要件」
・総務省 家計統計
・各種公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
