市販類似薬の改革は腰砕けでいいのか

FP
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医療費の増加と現役世代の保険料負担の重さは、もはや一時的な問題ではありません。高齢化の進展や医療技術の高度化により、医療保険制度の持続性そのものが問われています。
こうした中で注目されてきたのが、市販薬と成分や効能が近い「OTC類似薬」の取り扱い見直しです。医療費抑制策の一つとして期待されてきましたが、今回の議論の行方を見ると、改革が腰砕けに終わる可能性も見えてきました。

OTC類似薬改革が目指していたもの

OTC類似薬とは、本来は医師の処方が必要な医療用医薬品でありながら、成分や効能が市販薬と大きく変わらない薬を指します。湿布薬、解熱鎮痛剤、花粉症治療薬などが代表例です。
日本維新の会は、こうした薬を保険適用から外すことで、年間約1兆円の医療給付を削減できると主張してきました。狙いは、軽度な症状については受診に頼らず、市販薬を活用する「セルフメディケーション」への転換です。

見送りと「上乗せ負担」という折衷案

しかし、実際の議論は大きく後退しました。
保険適用の除外は見送られ、代わりに検討されているのは、保険適用を維持したまま、OTC類似薬の薬価に特別料金を上乗せし、患者負担を増やす仕組みです。
市販薬との価格差を縮めることで、市販薬への行動変容を促すという考え方ですが、処方箋がなければ入手できない点は変わりません。結果として、「薬をもらうためだけの受診」を減らす効果は限定的と考えられます。

医師会・患者団体の懸念

改革が後退した背景には、医師会や患者団体の強い反発があります。
医師会は、受診控えによる健康被害や、薬の適正使用が損なわれることを懸念しました。また、アレルギー疾患やがん治療などで薬を継続使用する患者からは、全額自己負担となることへの不安が示されました。
こうした声を受け、厚生労働省の審議会では保険適用維持を前提とした議論が進み、維新も事実上これを受け入れる形となりました。

行動変容は本当に起きるのか

OTC類似薬は、市販薬よりも有効成分量が多く、用量が細かく調整されているものが少なくありません。
患者負担が多少増えたとしても、効果や安心感を理由に処方薬を選び続ける患者は多いと考えられます。結果として、医療費削減効果は限定的にとどまる可能性があります。

結論

医療保険制度の持続性を確保するには、現役世代の保険料負担を抑える視点が不可欠です。その意味で、OTC類似薬改革は避けて通れないテーマでした。
本来は、長期・継続使用が必要な患者への配慮を制度的に行った上で、安全性が確認された軽度症状向けの薬は原則として保険適用から外し、薬剤師の関与のもとで市販薬活用を促す仕組みが求められていたはずです。
今回の折衷案は対立を回避する一方で、改革の効果を大きく削ぐものでもあります。医療費の増加という構造問題にどう向き合うのか。市販類似薬の議論は、その覚悟を問う試金石と言えるでしょう。

参考

・日本経済新聞「市販類似薬の改革は腰砕けでいいのか」(2025年12月16日朝刊)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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