市販薬と成分が似た薬に「追加負担」? 厚労省が検討するOTC類似薬の負担見直しとは

FP
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医療費の増加が続くなか、厚生労働省は「市販薬(OTC薬)と成分や効果が似た医療用医薬品」に対し、新たに患者の追加負担(上乗せ負担)を求める制度を検討しています。
ただし、保険適用は維持したままで、全額自己負担になるわけではありません。
今回の検討は「医療費の適正化」と「患者の負担感の調整」を両立するためのもので、2024年末までに方向性をまとめる見通しです。

この記事では、検討の背景、制度案の内容、対象となる人や薬の範囲、今後の焦点についてわかりやすく整理します。

1. そもそも「OTC類似薬」とは?

OTC類似薬とは、医師が処方する医療用医薬品のうち、市販薬と成分や効果が同じ(または近い)薬を指します。

例えば、市販薬としても売られている胃腸薬、アレルギー薬、鎮痛薬などが該当するケースがあります。

市販薬と同じ成分でも、医師の診断を踏まえて処方されるため、保険適用されれば患者は1〜3割負担で済みます。一方、市販薬を自分で買う場合は全額自己負担です。

こうした違いが「受診して処方薬をもらうほうが安い」という行動につながりやすく、医療費増加の一因として指摘されてきました。


2. 検討されているのは「保険適用除外」ではなく“追加負担”

今回厚労省が示した案の特徴は次の通りです。

  • 保険適用は維持する(全額自己負担にはしない)
  • ただし、OTC類似薬を処方された場合に薬剤料に追加料金を上乗せする
  • 自己負担の1〜3割はそのまま維持しつつ、「追加負担」が別途必要になる仕組み

厚労省は既存の「選定療養」という枠組みの活用を想定しています。

選定療養とは?

患者が「より高度な医療」「病院の選択」などを行う際に、通常の保険診療とは別に追加料金が生じる仕組みです。
例:大病院への紹介状なし受診の定額負担、差額ベッド代 など。

今回の案も、この仕組みを応用して「OTC類似薬を選ぶ場合は追加料金をとる」という方向性が示されています。


3. 上乗せ負担が検討される背景

背景には、次の2点があります。

① 医療費の圧縮(財政の持続可能性)

外来で処方される薬剤費は国際的にも日本は高水準とされ、財務省も「抑制が急務」と指摘しています。
後発医薬品(ジェネリック)への切り替え促進と同様に、OTC類似薬についても追加負担を求めることで、医療費を抑える効果が期待されています。

実際、2024年10月に導入された「特許が切れた薬で先発薬を希望する場合の上乗せ負担」では、後発医薬品の使用割合が3.5ポイント上昇しました。

② 市販薬で代替可能なケースは「受診なしでの対応」を促したい

軽度の症状では、市販薬で対応しながら必要な場合のみ受診するという「セルフメディケーション」が医療費抑制の観点でも求められています。
OTC類似薬が増えることで、患者自身の選択肢も広がります。


4. 子どもや慢性疾患の患者には「負担を抑える方向」

議論では、次のような配慮が検討されています。

  • 子ども
    →軽症でも受診が必要な場面が多く、OTC薬だけでは対応が難しい
  • 慢性疾患で長く薬が必要な患者
    →上乗せ負担を続けると負担が重くなりやすい
  • 難病や公費助成を受ける患者
    →追加負担の対象から外す案も提示
  • 入院患者
    →市販薬での対応がほぼ不可能なため、追加負担の対象外

配慮措置については議論が続いていますが、弱者への手厚い救済は維持する方向でほぼ一致しています。


5. どの薬を対象にするのかが最大の論点

議論の核心となるのは「どのOTC類似薬を対象にするか」です。

  • 「できるだけ広い範囲で対象とすべき」という意見
  • 一方で、「用法・用量が医療用と市販薬で異なるものもあり、慎重な線引きが必要」との指摘

特にアレルギー薬や胃腸薬、鎮痛薬などはOTC化が進んでいる領域ですが、医師の管理下で使うべきケースも多いため、薬ごとに丁寧な検討が不可欠とされています。


6. 年末までに方向性が決定へ

厚労省は、自民党・維新の実務者協議の議論も踏まえながら、年末までに制度の最終案を取りまとめる予定です。
「保険適用除外」という強硬案も引き続きテーブルにありますが、現時点では「選定療養としての追加負担」が現実的な案とされています。


結論

OTC類似薬の追加負担についての検討は、「医療費の持続可能性」と「患者負担の公平性」をどう両立させるかという、社会保障制度全体に関わるテーマです。

保険適用は維持しつつ、市販薬で代替できる部分は自己負担を少し増やすことで、適正な受診行動を促す狙いがあります。
一方で、子どもや慢性疾患など、「追加負担が重くなりやすい患者」への配慮が丁寧に検討されている点は重要です。

今後の焦点は、

  • 対象薬の範囲
  • 上乗せ負担額
  • 配慮対象の選定
    の3点になります。

年末にどのような結論が出るかは、医療費改革全体の流れを左右する要素でもあり、今後の議論を注意深く見ていく必要があります。


出典

  • 日本経済新聞「市販類似薬で負担上乗せ案 厚労省、保険適用は維持探る」
    (2025年11月28日付)
  • 厚生労働省 社会保障審議会 医療保険部会資料
  • 財政制度等審議会 財務省資料

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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