東京を訪れる人の数が、いま歴史的な転換点を迎えています。
2024年、東京都内の延べ宿泊者数は1億1000万人泊を突破。そのうち外国人の比率が初めて過半数(51.5%)に達しました。
インバウンド需要が完全に回復し、いまや「外国人の街」としての東京が現実のものとなっています。
■ 外国人が日本人を上回る日
新型コロナ禍前は4割程度だった外国人宿泊客の比率が、2024年には一気に過半数を突破。
観光庁の統計によると、東京都は全国で唯一「外国人比率が50%を超える」都道府県になりました。
観光目的だけでなく、長期滞在やリモートワーク拠点として滞在する外国人も増えており、「宿泊税」という視点でも外国人客の存在感が急拡大しています。
■ 税収はコロナ前の2.5倍、それでも追いつかない観光振興費
東京都の宿泊税は、2002年に全国で初めて導入された制度です。
1泊あたりの税額は1人100円または200円という定額制。宿泊料金が1万円未満なら非課税というシンプルな仕組みですが、ここ数年の宿泊料金高騰で課税対象が急増しています。
その結果、2025年度の宿泊税収見込みは約69億円。
2019年度(コロナ前)の2.5倍という急伸です。
ただし、東京都の観光産業振興費はそれ以上のペースで膨らんでおり、2025年度は約306億円(2019年度の約2倍)に達する見込み。
観光プロモーションやインフラ整備などの費用を、宿泊税だけでまかなうのは難しくなっています。
■ 外資系高級ホテルと民泊、課税見直しの焦点
税収が伸びる一方で、制度設計は20年前のまま。
当時とは宿泊市場の構造が大きく変わっています。
都税制調査会の提言では、次の2点が主な見直しポイントとして挙げられています。
- 外資系高級ホテルの増加
STR(米調査会社)によると、2024年の都内外資系ホテルの平均客室単価は約5万7000円。
日系ホテルの2.6倍にあたり、「JWマリオット東京」や「ブルガリホテル東京」など、1泊10万円超の宿も珍しくなくなりました。
現行制度ではこれらも一律200円。課税の「実質的公平性」をどう確保するかが課題です。 - 民泊への対応
Airbnbなどを含む民泊の普及も進んでいますが、多くが宿泊税の課税対象外。
都内でも一定の割合を占めるようになっており、税負担のバランスを取るためにも検討課題とされています。
このため、東京都は定額制から定率制(宿泊料金に応じて課税)への移行も視野に、年内に見直し素案をまとめる予定です。
■ 京都・大阪との比較 ― 「観光と税」のせめぎ合い
他都市ではすでに動きが始まっています。
京都市は2026年3月から最高税額を1万円に引き上げ、混雑対策や観光環境整備に充てる方針。
大阪府も2024年9月から課税対象を拡大しました。
一方、東京都は財源に余裕があり、「必要があれば一般財源で対応する」(都財務局)と慎重姿勢を崩していません。
しかし、観光政策の持続性を考えれば、税収と政策目的の整合性をどう取るかが避けて通れないテーマです。
■ 観光都市・東京のこれから
東京都は2035年に向けて、外国人旅行者を現在の1.6倍・4000万人へ増やすという目標を掲げています。
外国人の観光消費額も3.9兆円 → 6.3兆円へと拡大を目指しますが、その裏では観光政策コストも上昇の一途。
「誰がどのように負担するか」をめぐる議論は、これから本格化していきます。
東京が“世界都市”として成熟する過程で、宿泊税は単なる地方税ではなく、国際都市の構造変化を映す鏡となりつつあります。
📝まとめ
- 東京都の宿泊者数は1億人超、外国人が初めて過半数に
- 宿泊税収はコロナ前の2.5倍(69億円)に増加
- 高級ホテル・民泊など市場構造の変化を踏まえ、定率制など見直し検討中
- 財源確保と観光政策のバランスが、次の焦点に
出典:2025年10月23日 日本経済新聞朝刊
「宿泊税でみる東京観光(上) 税収、コロナ前の2.5倍に」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

