家賃高騰が家計に与える影響──教育費・老後資金・貯蓄をどう守るか

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東京23区では平均家賃が21万円を超え、可処分所得に占める割合が34%に達しています。大阪や福岡でも、すでに「手取りの3割前後」という危険ラインに迫りつつあります。
では、この家賃負担の増加は、具体的に家計にどのような影響を与えるのでしょうか。


1. 家賃上昇と家計全体の構造

家計支出のなかで「住居費」は最も大きな固定費です。
総務省の家計調査によると、2人以上の勤労者世帯の消費支出に占める住居費の割合は約10%前後で推移してきました。これは全国平均の数字で、住宅ローンの完済世帯や持ち家比率が高いことも影響しています。

しかし、都市部の賃貸世帯に限れば、住居費は可処分所得の2〜3割を占めるのが一般的です。ここに今回の「家賃の急騰」が直撃し、生活の他の領域を圧迫し始めています。


2. 教育費への影響

最も影響が大きいのは「教育費」です。
文部科学省の調査によれば、私立大学に進学した場合、学費だけで年間100万円前後。下宿を伴えば生活費を含めて年間200万円近い支出になります。

仮に子どもが2人いれば、教育費のピーク期には年間400万円以上が必要です。
一方で都市部の家賃が月25万円(年間300万円)に達していると、教育費と住居費で世帯年収の大半を占めてしまいます。

特に中学受験や高校の私立進学を選ぶ世帯では、家賃上昇によって「希望する教育機会を諦めざるを得ない」というケースも現れ始めています。


3. 貯蓄余力の低下とリスク対応力

住居費は毎月必ず出ていく固定費であり、変動させにくい支出です。これが増えると、真っ先に削られるのは「貯蓄」や「余暇費用」です。

例えば、手取り月収60万円の家庭で家賃が18万円から21万円に上がると、年間で36万円の負担増。
その分、貯蓄額が減れば、突発的な病気や失業への備えが弱くなります。FPの現場でも「貯蓄を削って家賃を払っている」という相談は増えています。

リスク対応力を失うことは、生活の安定性そのものを揺るがすことにつながります。


4. 老後資金への影響

家賃負担が大きい世帯は、老後資金の積み立ても遅れがちになります。
住宅ローンであれば完済後に住居費が大幅に下がりますが、賃貸は生涯にわたって家賃が発生します。

65歳以降の高齢期に年金だけで生活する場合、月20万円超の家賃は大きな負担です。
しかも今後も家賃上昇が続けば、定年後の生活設計に「想定外の出費」としてのしかかります。

「家賃に追われ続ける老後」を避けるためには、現役時代からの備えが不可欠です。


5. 精神的ストレスとライフスタイルの制約

数字に表れにくいものの、家賃負担の重さは精神的なストレスとして家族に影響を与えます。

  • 子どもの教育費に十分回せない不安
  • 将来の老後資金が貯まらない焦り
  • 急病や転職に耐えられないプレッシャー

こうした心理的圧迫は、家庭の意思決定やライフスタイルにも影響します。「旅行や趣味を我慢して家賃を払う」という状況が長期化すると、生活の満足度そのものが下がってしまいます。


6. 家計診断の目安──「家賃25〜30%ルール」

改めて確認しておきたいのは、家賃は可処分所得の25〜30%以内に収めるのが目安だということです。

  • 25%以内:家計の安定性が高い
  • 30%前後:収支バランスに注意が必要
  • 30%以上:教育費・貯蓄・老後資金が圧迫される危険水域

このラインを超える場合は、住まいの見直しやライフプラン全体の再検討が不可欠になります。


7. 対応策の方向性

家賃高騰に直面した場合、どのような対策があり得るでしょうか。

  1. 住む場所を見直す
     通勤時間とのバランスをとりつつ、郊外や準都心に移ることで家賃を抑える。
  2. 資産形成を仕組み化する
     NISAやiDeCoを活用し、少額でも自動的に積み立てる仕組みを作る。
  3. 教育費の計画を具体化する
     進学ルートや奨学金の活用を早めに検討し、家賃と両立可能なラインを見極める。
  4. 購入の可能性を再検討する
     高騰しているとはいえ、ローン返済は資産形成につながる。長期的に賃貸より有利になるケースもある。

まとめ:固定費が家計を決める時代に

食費や光熱費が上がるなかで、さらに家賃が上昇すれば、家計に与える影響は計り知れません。特に「教育費」と「老後資金」という人生の2大支出に直結する点で、住居費は家計の未来を左右します。

いま重要なのは、家賃が家計に占める割合を冷静に把握することです。そのうえで、住まいやライフプランを柔軟に見直す必要があります。

家賃高騰は一時的な現象ではなく、構造的に続く可能性があります。だからこそ、早めに対策を講じて「住まいと家計のバランス」を守ることが、これからの時代を安心して生き抜く鍵になるのではないでしょうか。


(参考:日本経済電子版 2025年9月4日記事)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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