家計金融資産2239兆円、過去最高 ― 高齢者世代に広がる「二極化」

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日銀が発表した2025年4~6月期の資金循環統計によると、日本の家計が保有する金融資産は2239兆円と、過去最高を更新しました。前年同期比で1%増加という数字は一見順調に見えますが、その内実を見ていくと「高齢者世代の資産の二極化」という深刻な課題が浮かび上がっています。


高齢者が保有する資産の偏り

家計金融資産の6割前後は60歳以上の世帯が保有しているとみられます。
一方で、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2024年調査によると、60歳代の単身世帯の27.7%は金融資産ゼロという結果でした。ゼロを含め200万円未満の世帯は42%にのぼります。これはアベノミクス前の2012年調査に比べて7ポイント増加しており、「老後資産をほとんど持たない層」がじわじわ拡大していることがわかります。

その一方で、3000万円以上の金融資産を持つ世帯は16.8%と微増しており、資産を持つ人と持たない人の格差がくっきりと分かれつつあります。


物価高と株高が格差を拡大

資産を持たない人にとって、直撃しているのが食品や生活必需品の価格高騰です。十分な利息収入を得られないまま長期の低金利を経験し、結果として貯蓄を取り崩す高齢者が増えています。

一方で、資産を持つ層は株高の恩恵を受けやすい状況です。25年6月末時点で日経平均株価は4万円台に乗せ、株式の残高は294兆円(前年同期比4.9%増)。投資信託残高もNISAを背景に9%増と堅調でした。資産を株や投信に振り向けていた人は、確実にそのメリットを享受しています。


預金は18年半ぶりの減少

もう一つ注目すべきは、家計の現金・預金残高が0.1%減の1126兆円となった点です。マイナスになるのは2006年以来、実に18年半ぶりです。キャッシュレス決済の浸透に加え、NISAや投信など「預金以外」にお金を移す動きが広がっていることが背景にあります。

「とりあえず預金」という時代から、「資産を運用に回す」動きが少しずつ浸透してきていることが読み取れます。


国債市場と日銀の動き

資金循環統計では、国債の保有割合にも変化が出ています。6月末の国債保有比率(国庫短期証券を除く)は日銀が50.94%と、3月末より0.8ポイント低下しました。
日銀は2024年8月から国債買い入れの減額を開始しており、さらに2026年度からは買い入れ減額幅を月2000億円に圧縮する計画です。国債市場の「日銀依存度」が少しずつ低下していく流れが続くとみられます。


これからの課題 ― 老後資産の分岐点

今回の統計が示すのは、「資産を持つ高齢者はより豊かに、資産を持たない高齢者はより厳しく」という二極化の加速です。

  • 株や投信を通じて資産を増やした人
  • 預金頼みで資産を取り崩すしかない人

その差は、物価上昇局面でますます広がります。老後を迎えるにあたり、資産形成の有無が生活の質を大きく左右する時代になったと言えるでしょう。


まとめ

日本の家計金融資産は史上最高を更新しました。しかし「全体が増えた」という事実の裏側には、高齢者世代の厳しい現実があります。
資産を築いてきた人とそうでない人の差は、物価高と株高という環境下でより鮮明に。今後は「資産運用の有無」が老後生活を分ける分岐点になっていきそうです。


👉 次回は、「なぜ60代で金融資産ゼロが増えているのか?」について、背景要因を掘り下げていきます。


📌参考:2025年9月19日付 日本経済新聞朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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