教育資金、住宅資金、老後資金――家計の中で長期的に必要となる3つの大きな支出は、どれも重要で、どれも待ってはくれません。
「教育費を優先すれば老後が心配」「老後資金を確保したいが子どもの進学費も迫っている」――多くの家庭で起きるこのジレンマを解く鍵は、バランス設計にあります。
今回は、教育資金を家計全体の中でどう位置づけ、無理のない積立戦略をどう組み立てるかを整理します。
1.「3つの積立」をどう共存させるか
家計の中長期的な積立は、大きく分けて次の3つに分類できます。
| 目的 | 期間 | 性格 |
|---|---|---|
| 教育資金 | 約18年 | 使用時期が決まっている確定支出 |
| 住宅資金 | 20~35年 | 家族の生活基盤を整える長期支出 |
| 老後資金 | 30~40年 | 退職後の生活維持資金 |
これらを別々に考えると、「どれも足りない」と感じてしまいます。
しかし、視点を変えれば、同じ家計の中で“優先順位と期間”を整理することこそが本質的な家計設計です。
2.積立の「優先順位」をつける
教育資金は、使う時期が明確に決まっているため、優先度は高い支出です。
ただし、すべてを現金で準備しようとすると、他の目的(住宅・老後)への資金配分が滞ります。
現実的な優先順位の考え方は次のとおりです。
- 緊急資金(生活防衛費)を確保する
生活費の3〜6カ月分を最優先で確保します。 - 教育資金を「児童手当+定額積立」でベース化する
この段階で18年後の教育費の骨格を作ります。 - 老後資金の“時間を味方にする積立”を開始
iDeCoやNISAを活用し、少額でも早めにスタート。 - 住宅資金は無理のない返済計画で調整
教育費のピーク(大学進学期)と重ならないよう返済計画を設計。
このように、段階的に積立の優先順位を整理することで、短期と長期のバランスを取りやすくなります。
3.家計全体の資金配分モデル
家計の可処分所得のうち、積立や貯蓄に回せる割合(貯蓄率)は一般的に15~20%が目安です。
その中での配分イメージを示すと、次のようになります。
| 項目 | 割合 | 備考 |
|---|---|---|
| 教育資金 | 40% | 児童手当・定期積立などで安定確保 |
| 老後資金 | 30% | iDeCo・NISAで長期運用を活用 |
| 住宅資金・リフォーム等 | 20% | ローン返済や将来の修繕準備に充当 |
| その他(冠婚葬祭・予備費など) | 10% | 想定外支出への備え |
この配分はあくまで目安ですが、「教育費に偏らないこと」「老後資金を後回しにしないこと」が重要な視点です。
4.“積立疲れ”を防ぐ3つの工夫
長期間の積立では、途中で中断してしまうケースも少なくありません。
積立を「継続できる仕組み」にするために、次の3点を意識しましょう。
- 自動化する
給与天引き・自動振替など「先取り貯蓄」を徹底し、意志に頼らない仕組みを作る。 - 可視化する
積立専用口座を分け、目的ごとの残高を把握することで、達成感と継続意欲が高まります。 - 見直す
収入やライフイベントに応じて積立額を柔軟に調整。一定期間ごとに“家計点検”を行う。
継続できる積立こそが、最も確実な資産形成です。
5.家族で「共有」する家計戦略
教育費や老後資金の話は、家族にとって“将来を共有する対話の機会”でもあります。
夫婦でお互いの優先順位を話し合い、「どんな教育を受けさせたいか」「老後をどう過ごしたいか」を言語化することが、最終的には家計設計の精度を高めます。
また、子どもが高校生・大学生になるタイミングで、奨学金や家計管理の仕組みを一緒に考えることも、金融教育として大切な経験になります。
結論
家計を安定させる最大のポイントは、「教育・住宅・老後」を同じ地図の上で管理することです。
教育費を優先しすぎても、老後資金を貯めすぎても、どちらかが欠けてしまいます。
貯める力と続ける力のバランスを保ちながら、ライフプランの全体像の中で教育資金を位置づける――
それこそが、無理のない積立戦略の本質です。
出典
- 金融庁『家計の見直しに関する基礎データ(2024年)』
- 文部科学省『子供の学習費調査(令和5年度)』
- 日本政策金融公庫『教育費負担に関する調査(2024年)』
- 総務省『家計調査年報(2023年版)』
- 厚生労働省『厚生年金・iDeCoに関する統計(2024年)』
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
