成年後見制度の見直しにより、「途中で終了できる後見」が制度として明確化される方向が示されました。この変化は、専門職後見だけでなく、親族が後見人となる家族後見のあり方にも大きな影響を及ぼします。
これまで家族後見は、「一度引き受けたら最後まで続けるもの」と受け止められがちでした。制度改正は、この前提そのものを見直す契機となります。
家族後見が担ってきた役割
家族後見は、本人の身近な存在である親族が後見人として、財産管理や契約行為を支援する形態です。
本人の生活実態をよく理解していること、柔軟な対応が可能なことから、家族後見を希望するケースは少なくありません。一方で、制度上は専門職後見と同様に、家庭裁判所の監督下で継続的な責任を負う立場に置かれてきました。
家族後見が抱えてきた現実的な負担
家族後見の課題として、次のような点が指摘されてきました。
・後見人としての役割がいつまで続くのか見通せない
・本人の状態が安定しても制度をやめられない
・帳簿管理や家庭裁判所への報告など、事務負担が想像以上に重い
・親族間の意見対立や責任の押し付け合いが生じやすい
こうした負担感が、家族後見をためらう要因になっていた側面は否定できません。
「終了できる後見」が家族後見にもたらす変化
制度改正により、家庭裁判所の判断で後見を終了できる道が開かれれば、家族後見の位置づけは大きく変わります。
家族後見は、「一生背負う役割」ではなく、「必要な期間を支える役割」として捉え直される可能性があります。
例えば、
・認知機能が一時的に低下した時期だけ家族が支援する
・入院や施設入所など特定の局面に限定して後見を行う
・状況が落ち着いた段階で本人に管理を戻す
といった使い方が、制度上も現実的になります。
家族間の合意形成がより重要になる
家族後見が「期限付きの役割」になることで、開始時点での合意形成の重要性は一段と高まります。
誰が後見人になるのか、どこまでの権限を持つのか、どのような状態になれば役割を終えるのか。
こうした点を事前に共有しておくことで、後見開始後のトラブルや不信感を防ぎやすくなります。
終了が制度上想定されるからこそ、家族内での話し合いが不可欠になります。
専門職との役割分担も柔軟に
家族後見の終了が可能になることで、専門職との役割分担にも新たな選択肢が生まれます。
家族が中心となって後見を行い、一定の節目で専門職に引き継ぐ、あるいは逆に専門職の関与を終えて家族管理に戻す、といった対応も考えられます。
家族後見と専門職後見を対立的に捉えるのではなく、段階的に使い分ける発想が広がる可能性があります。
結論
成年後見制度の見直しは、家族後見を「覚悟が必要な制度」から「選択しやすい制度」へと変える力を持っています。
家族が支える期間には限りがあり、その役割が終わることを前提に制度が設計されることは、本人にとっても家族にとっても現実的です。
支援が必要なときに関わり、役割を終えたら次へつなぐ――家族後見は、そうした柔軟な支援の形へと進化しつつあります。
参考
・日本経済新聞「成年後見制度、終了しやすく 法制審が要綱案」(2026年1月28日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

