金や銀の価格が上昇して注目を集める中、
「実物(地金・コイン)を買うべき? それともETF?」
という質問をよく耳にします。
どちらも“同じ貴金属”への投資ですが、仕組みもリスクもまったく異なります。
この記事では、初心者が迷わず判断できるように、5つの観点から比較します。
🪙 1. 「現物(地金・コイン)」の特徴
💡 “手で持てる資産”という安心感
金や銀の現物を直接購入する方法です。
田中貴金属工業や三菱マテリアルなどの地金商で、1g単位で購入できます。
メリット
- 実物を「手元で保有」できる安心感
- 金融システムや通貨の信用不安にも強い
- 破産・倒産リスクがない(自己保管可能)
デメリット
- 保管場所が必要(盗難・火災リスク)
- 購入・売却時に手数料+消費税(10%)がかかる
- 売買時の価格差(スプレッド)が大きい
🧾 たとえば田中貴金属の場合、
購入価格と売却価格の差が1gあたり20〜40円程度あるため、
短期売買には不向きです。
💹 2. 「ETF(上場投資信託)」の特徴
💡 “手間なく分散できる”投資方法
証券口座から株と同じように売買できるのがETF(Exchange Traded Fund)です。
国内では「SPDRゴールド・シェア(GLD)」や「iシェアーズ・シルバーETF(SLV)」などが代表的です。
メリット
- スマホやネット証券で手軽に購入可能
- 保管コスト・盗難リスクがない
- 少額から分散投資できる
- 為替リスクを含めて国際分散も可能
デメリット
- 「現物を手にできない」心理的な不安
- 信託報酬(年0.4〜0.5%前後)がかかる
- 為替レートで円建て価格が変動する
ETFは“資産運用の一部”として貴金属を組み入れたい人に向いています。
⚖️ 3. 「実物 vs ETF」比較一覧
| 比較項目 | 実物(地金・コイン) | ETF(上場投資信託) |
|---|---|---|
| 所有の形 | 自分の手元に保管 | 信託銀行等に保管(間接所有) |
| リスク | 盗難・紛失 | 為替・価格変動 |
| コスト | 消費税+保管費+売買手数料 | 信託報酬(年間0.4〜0.5%) |
| 流動性 | 店頭売買(やや限定的) | 証券市場で即時売買可能 |
| 税制 | 譲渡所得(総合課税) | 上場株式扱い(分離課税20.315%) |
| 保有目的 | 実物資産・通貨リスクヘッジ | 運用ポートフォリオの一部 |
| 向いている人 | 「手で持ちたい」「安心感を重視」 | 「手軽に運用」「短期・積立派」 |
💡 4. 初心者におすすめの考え方
① 「まずETFから始めてみる」
ETFは1万円前後から購入でき、価格変動の感覚をつかむのに最適です。
「GLD」や「1540 純金上場信託(国内ETF)」など、国内でも手数料が低い商品があります。
② 「慣れてきたら実物で一部を保有」
ETFで相場感をつかんだあと、
“非常時の備え”として現物を5〜10%程度保有するのがおすすめ。
災害時や通貨急落リスクへの保険にもなります。
③ 「両方を使い分ける」
- ETF=日常の資産運用
- 現物=リスクヘッジ・分散保有
この「二刀流」が、安定した貴金属投資の基本です。
📊 5. 現物とETFを組み合わせたモデル例
| 投資スタイル | 金(ゴールド) | 銀(シルバー) | コメント |
|---|---|---|---|
| 保守型 | すべて現物保有 | なし | 手元に資産を置きたい人向け |
| バランス型 | 金ETF7割・現物3割 | 銀ETF少額 | 分散+実物安心型 |
| 積極型 | ETF中心(国内外) | 銀ETF比重大 | 値上がり益を狙う |
🧭 6. まとめ:「実物は安心、ETFは効率」
| 結論 | ポイント |
|---|---|
| 🔸 実物 | 手に取れる安心感。長期保有・非常時備え向き |
| 🔹 ETF | 手軽・効率的。積立や分散投資向き |
| 💡 両立型 | “守り”と“運用”を両立させたい人に最適 |
投資初心者にとっては、
「ETFで始めて、実物で守る」のがもっとも現実的なステップです。
🪙 参考資料:
出典:国税庁「譲渡所得の課税関係」/金融庁「ETFの仕組み」
田中貴金属工業・三菱マテリアル公表データ
2025年10月17日 日本経済新聞朝刊「銀最高値、群がる投機資金」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
