定年退職を迎えると、多くの方が「これからの健康保険はどうなるの?」と疑問を持ちます。会社員のときは給与から自動的に保険料が天引きされていましたが、リタイア後は自分で選択しなければなりません。
今回は 会社員として働かない場合に考えるべき3つの選択肢 と、それぞれの保険料や特徴をわかりやすく整理してみます。
健康保険の3つの選択肢
① 退職前の健康保険を「任意継続」する(最長2年)
退職時に加入していた健康保険を、そのまま最長2年間だけ続けられる制度です。
- 特徴
- 保険料は全額自己負担(会社負担がなくなるため、在職中の2倍近くになることも)。
- 標準報酬月額は「退職時の額」か「全体の平均額」の低いほうを基準に計算。
- 協会けんぽでは2025年度、上限を32万円としています。
② 国民健康保険(国保)に加入する
住んでいる自治体の国保に加入します。
- 特徴
- 世帯単位で加入。前年の所得や世帯人数で保険料が決まる。
- 収入が多い人は保険料も高くなる。
- 自治体ごとに計算方法が違い、シミュレーターを用意しているところも。
③ 家族の健康保険の「被扶養者」となる
配偶者などが会社員や公務員の場合、その扶養に入る選択肢です。
- 特徴
- 保険料はゼロ!
- 条件:60歳未満なら年収130万円未満、60歳以上なら年収180万円未満(かつ被保険者の年収の1/2未満など)。
- 夫が妻の扶養に入るケースもあり、意外と見落とされがち。
任意継続と国保、どちらが得か?
例えば 59歳で給与収入800万円、東京都江戸川区在住、夫婦2人世帯 のケース。
- 協会けんぽで任意継続 → 月額約3.1万円
- 国保に加入 → 月額約6.6万円
年間でみると国保のほうが約42万円も高くなります。
ただし、国保は「前年所得」が反映されるため、退職後しばらくして収入が下がると安くなることも。最初は任意継続、2年後に国保へ切り替える方法もあります。
65歳リタイア時の例
60歳から再雇用(年収350万円)で働き、65歳で完全リタイアするケース。
- 任意継続(標準報酬月額26万円) → 月額約2.5万円
- 国保 → 月額約3万円
定年前に比べ、収入減少に伴い保険料も下がります。
見落としがちなポイント
付加給付の有無
健康保険組合や共済組合には、医療費の自己負担をさらに抑える「付加給付」がある場合があります。
例:1か月の自己負担を2〜3万円に抑える、共済組合なら2万5,000円で済むなど。
任意継続を選んでも、この付加給付を受けられることがあります。
特例退職被保険者制度
一部の健康保険組合には、任意継続より長く(74歳まで)加入できる制度があります。治療費がかさむ場合には大きなメリット。
高額療養費制度と年齢の壁
高額療養費制度は、70歳を境に内容が大きく変わります。
- 70歳未満(一般所得者) → 自己負担限度額は月9万円前後。
- 70歳以上(一般所得者) → 外来は月1万8,000円、入院+外来+家族合算で月5万7,600円(4回目以降はさらに下がる)。
70歳以上では、外来費用を複数の医療機関で合算できる点も大きな違いです。
まとめ:選択はケースバイケース
- 退職直後は任意継続が有利 なことが多い。
- 収入が減った後は国保に切り替え たほうが安くなる場合がある。
- 扶養に入れるなら最もコストを抑えられる。
- 健康保険組合の「付加給付」「特例制度」の有無も確認を。
社会保険料や医療費負担は、老後の生活設計に直結します。
「年金収入があるから安心」と思っていたら、実は保険料負担が重くのしかかることも。
ぜひ退職前に、勤務先や自治体に確認しながら、 自分に合った選択肢 を準備しておきましょう。
📌 参考
FPジャーナル専門家コラム「会社員として働かない場合の健康保険3つの選択肢」(日本FP協会)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

