子連れ出張を選択肢に ― 働き方の多様化が進む時代に

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子育て中の親にとって、出張や遠方での仕事は大きなハードルになりがちです。
子どもを預ける先が見つからない、配偶者や親族に頼れない、費用負担が重い――。
そんな理由から、キャリアを諦めたり、チャンスを逃したりするケースも少なくありません。
しかし近年、「子連れ出張」を支援する制度を整える企業や大学が増え、働く親の選択肢が少しずつ広がり始めています。

企業で広がる「子連れ出張制度」

奈良県の肌着メーカー・タカギは、出張に子どもを同行する際の旅費やシッター代の一部を会社が負担する「子連れ出張制度」を導入しました。
女性社員が8割を占める同社では、出張を諦めていた社員の心理的なハードルを下げ、仕事と育児の両立を後押ししています。
実際に制度を利用したシングルマザーの社員は「制度化されていることで、子どもを連れて行くことに後ろめたさがなくなった」と話します。

企業側にとってもメリットがあります。
出張の打診がしやすくなり、人材の能力発揮やキャリア継続につながるからです。
「子育て中の社員も業務にチャレンジできる体制を整えることが、組織全体の成長につながる」と、同社の役員は語っています。

学術界でも進む取り組み

学会や研究発表に参加する研究者の間でも、子連れ出張を支援する動きが広がっています。
東京大学や京都大学などでは、子どもの旅費を研究費から支出できる仕組みを整備。
名古屋大学での学会に子どもを同行した山口大学の教授は「決して楽ではないが、家庭と研究を両立するうえで最適な選択だった」と振り返ります。

航空業界や自治体にも波及

全日本空輸(ANA)は、グループ社員やOGが互いに子どもの世話をサポートする「チャイルド・ケア・ステーション」を運用しています。
早朝や深夜など外部の託児サービスが利用しづらい時間帯にも対応し、子育て世代の客室乗務員を支えています。

さらに、北海道富良野市では「親子ワーケーション」の取り組みが始まりました。
滞在期間中の保育料を市が負担し、一定の条件を満たせば宿泊費やレンタカー代の助成も受けられます。
リモートワークと地域体験を組み合わせた新しい働き方として注目されています。

多様な支援と課題

こうした制度は、親が働く機会を増やすだけでなく、組織の多様性を高める効果もあります。
一方で、育児の負担が依然として母親に偏っている現状も見逃せません。
法政大学の武石恵美子教授は「父親も積極的に制度を利用し、家庭でも役割分担を進めることが重要」と指摘しています。
制度の整備と同時に、利用しやすい職場風土づくりが求められています。

結論

子連れ出張や親子ワーケーションといった新しい制度は、単なる福利厚生ではありません。
それは、働く親がキャリアを諦めず、家族と共に生き方を選べる社会への一歩です。
制度の導入だけでなく、利用を自然に受け入れる職場文化が広がることで、真の意味での「働き方の多様化」が実現していくでしょう。

出典

日本経済新聞「子連れ出張を選択肢に 育児、夫婦間の負担分散」(2025年11月8日付)
総務省「労働力調査(2024年)」
法政大学 武石恵美子教授 コメントより


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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