18歳未満のつみたて投資枠が解禁される見通しとなり、家庭の教育費戦略は大きな転換点を迎えます。
教育費の準備は従来、学資保険や親名義の積み立てが中心でしたが、今後は非課税制度であるNISAを子ども名義で活用できるようになります。
一方で、子ども名義で投資する場合には、贈与税や資金管理のルールなど、見過ごされがちな税務面の論点も浮かび上がります。
今回は、教育費と投資の組み合わせ方、そして子ども名義投資の税務整理について解説します。
1. 教育費は「時間」で戦う時代へ
少子化の加速や進学パターンの多様化により、教育費は家庭ごとに負担感が増しています。
文部科学省の調査では、大学進学までにかかる教育費は、進路によって大きく異なります。
- 公立中心の場合:約1000万円
- 私立中心の場合:1500万円~2000万円
- 寮生活・海外留学などを含む場合はさらに増加
こうした費用を計画的に準備するには、早期から積み立てを始めることが最も効果的です。
0歳や幼少期から投資信託でコツコツ積み立てることができれば、18年という長い時間が味方になります。
2. 教育費の投資戦略は「使う時期」から逆算する
教育費はまとまって必要になる時期が決まっているのが特徴です。
投資戦略もこのタイミングから逆算して考えることが重要です。
小学校〜中学前半
- 必要額は比較的限定的
- 投資比率を高めやすく、積極的な積み立て期
- インデックス中心の長期積立が有効
中学後半〜高校
- 塾・部活動・私立高校進学などで費用が急増
- 引き出しが発生しやすいため、リスクを徐々に下げる
- 債券比率の引き上げや現金化の計画が必要
大学進学前後
- 一度に大きな費用が必要
- 市況に左右されないよう、数年前から取り崩しシフトへ
- 子どもNISAの非課税枠を十分活かしながら安定運用を検討
教育費の投資戦略では、リスクを取り過ぎず、必要時期に確実にお金を用意できる計画性がポイントになります。
3. 子ども名義投資には税務面の整理が欠かせない
子どものNISAが解禁されることで、名義に関する税務上の取り扱いが重要になります。
資金を出すのは誰か
一般に、子ども名義の口座に入るお金は「子どもへの贈与」と扱われます。
贈与税の非課税枠(年間110万円)の範囲であれば問題はありませんが、祖父母がまとまった資金を渡す場合には注意が必要です。
「名義預金」問題との違い
税務調査でよくテーマとなる名義預金とは、名義だけ子どもでも実質的に管理は親がしている状態を指します。
しかしNISA口座は制度上、親(または代理人)が運用を管理するため、名義預金とは必ずしも一致しません。
ただし、贈与契約や資金移動の記録を残しておくなど、形式的な要件の整理は重要です。
教育費として使う場合
教育費は原則として「生活費・教育費」として贈与税の課税対象外とされます。
ただし、投資目的の資金、将来の資産形成目的の場合は教育費とは区別されます。
子どもNISAは非課税投資制度であるため、教育費としての「必要資金」と「資産形成枠」をどう分けるかの設計がポイントになります。
4. 子どもNISAと他制度の併用設計
教育費の準備はNISAだけではありません。他制度とのバランスが重要です。
学資保険
- 確実性は高い
- 保障の要素が必要な家庭には適合
- ただし利回りは低め
親のNISA
- 非課税枠が大きく、柔軟性が高い
- 教育費以外の目的とも併用しやすい
ジュニアNISA終了以前の資産
- ロールオーバーの有無、管理方法を整理しておくと一体運用が可能
複数制度を組み合わせる際は、資金の出口(いつ使うか)とリスク許容度を基準に役割を整理することが効果的です。
5. 実務的な運用ルールを決めておく
制度が始まる前に、家庭ごとに次のようなルールを決めておくと運用がスムーズになります。
- 成人までにどれくらいの資産を持たせるかの目標設定
- 教育費で取り崩す場合と、子どもの将来資金として残す場合の区分
- 贈与として扱う資金は記録を残す(通帳、メモ、契約書など)
- 親の資産形成とのバランス調整
資金が教育費と将来資金の両方に使われる可能性があるため、目的を明確にすることが、取り崩し時の判断ミスを防ぐことにつながります。
結論
18歳未満のNISAの解禁により、教育費の準備方法、子どもの資産形成、そして名義や贈与の税務整理という複数の論点が同時に動き出します。
家庭にとっては大きなメリットがありますが、教育費の性質上、必要時期とリスク管理が極めて重要になります。
さらに、贈与の扱いや名義の整理といった実務面の理解も不可欠です。制度開始までに教育費戦略の全体像を整えておくことが、子どもNISAを最大限に活用する鍵となります。
参考
金融庁・税制関連資料、日本経済新聞報道(NISA制度拡充案・教育費関連)、教育費統計調査資料。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

