教育資金は「できるだけ貯めておきたい」と考えるものの、実際には子どもの進学時期にすべてを準備できるとは限りません。
そんなときに頼りになるのが、奨学金や教育ローンといった“借りる資金”の制度です。
ただし、これらは「将来返済が必要なお金」である点を正しく理解しておくことが大切です。
今回は、奨学金と教育ローンの基本的な仕組みと、親としてのサポートの考え方を整理します。
1.奨学金の種類と特徴
日本で最も利用が多いのは、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。
おおまかに次の2種類があります。
| 区分 | 利息 | 特徴 | 返済義務 |
|---|---|---|---|
| 第1種(無利子) | なし | 学力・家計の基準を満たす必要あり | あり |
| 第2種(有利子) | 年0.2〜1.0%程度 | 比較的利用しやすい | あり |
無利子の第1種は採用枠が限られ、世帯収入や学業成績などの条件があります。
一方、第2種は多くの学生が利用可能で、在学中は返済が始まらず、卒業後に分割で返していきます。
返済期間は最長20年程度に及ぶこともあり、月々の返済額は1万円前後が目安です。
将来の家計に影響するため、“借りた本人が返す”意識を育てることが欠かせません。
2.給付型奨学金の拡充
2020年度以降、所得に応じて返済不要の「給付型奨学金」も拡大しています。
住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯を対象に、授業料減免とあわせて支援が行われる仕組みです。
たとえば、私立大学に通う学生で第Ⅰ区分(最も支援が手厚い層)の場合、
年間約90万円前後の給付と授業料減免を受けられるケースもあります。
このように、「借りる」だけでなく「もらえる」支援も年々整備が進んでいます。
3.教育ローンの基本
奨学金のほかに、親が利用する「教育ローン」もあります。
代表的なのは、日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利率 | 年約1.7%前後(固定) |
| 融資額 | 学生1人あたり上限450万円まで |
| 返済期間 | 最長15年 |
| 特徴 | 世帯年収基準あり(おおむね年収950万円以下) |
民間銀行でも教育ローンを取り扱っていますが、公庫より金利が高い代わりに審査が早く、在学中の繰り上げ返済にも柔軟です。
教育ローンは、入学金や授業料を一時的に立て替える“親のサポート資金”として位置づけるとよいでしょう。
4.奨学金と教育ローンの使い分け
奨学金は「子ども本人が将来返す」制度であり、教育ローンは「親が返す」制度です。
この性格の違いを理解し、家計全体でどう分担するかを話し合うことが重要です。
- 奨学金:本人の自立・責任感を育む教育的効果もある
- 教育ローン:急な入学金や設備費への一時的対応に向く
特に、兄弟姉妹が続けて進学する時期には、教育ローンを「つなぎ資金」として活用するケースが多く見られます。
5.親としてのサポート
奨学金は「借りた本人の名義」ですが、実際には親が返済を支援している家庭も少なくありません。
返済が滞ると信用情報に傷がつく恐れがあるため、家族で返済スケジュールを共有しておくことが大切です。
また、親の立場からできるサポートには次のようなものがあります。
- 奨学金の返済シミュレーションを一緒に行う
- 社会人になっても家計管理を支援する
- 家計全体のライフプランに教育費・老後費を組み込む
奨学金も教育ローンも、目的は「子どもの将来を応援すること」です。
ただし、親自身の老後資金を削ってまで支援するのは本末転倒です。
結論
教育資金は、貯めるだけでなく「借りる」選択肢も視野に入れる時代です。
奨学金や教育ローンを正しく理解し、誰が、どの目的で、どのくらい借りるのかを明確にしておくことが重要です。
親と子が一緒に話し合い、「返せる計画」と「支え合える仕組み」を作っておくことが、安心して進学を迎えるための第一歩です。
出典
- 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)『奨学金のご案内(令和6年度版)』
- 日本政策金融公庫『教育一般貸付(国の教育ローン)』
- 文部科学省『高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)』
- 金融庁『家計の見直しに関する基礎データ(教育費関連)』
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
