外為特会・日銀ETFは減税財源になり得るのか

政策

食品消費税の2年間ゼロという政策が打ち出されました。年間5兆円規模とされる減収を、特例公債に頼らずどう賄うのか。議論は「税外収入」に向かっています。

候補として挙がるのが、外国為替資金特別会計(外為特会)と日銀保有ETFです。しかし、これらは単なる“埋蔵金”ではありません。本稿では、その仕組みと限界を整理します。


外為特会とは何か

外為特会は、為替介入に使う外貨準備を管理する特別会計です。保有資産の大半は米国債などの外貨建て資産です。

円安局面では、外貨資産の円換算額が膨らみ、利子収入も増えます。2024年度決算では剰余金が約5.3兆円とされています。このうち約3.2兆円が一般会計に繰り入れられました。

現行ルールでは、原則として剰余金の7割まで一般会計に繰り入れることが可能です。仮に繰入割合を拡大しても、年間で見込める財源は1〜2兆円程度と推計され、5兆円規模の減税を恒常的に賄うには力不足です。

評価益を実現するリスク

外貨資産を売却し円転すれば、評価益を実現できます。しかし、それは外貨準備の減少を意味します。

・為替介入余力の低下
・事実上の為替介入と受け止められるリスク
・円安依存の財政運営と見なされる可能性

市場が「円安で膨らんだ利益を財源にしている」と受け止めれば、逆に円安や金利上昇を招くリスクも否定できません。

外為特会は本来、為替安定のための制度です。政策目的への転用には制度的・市場的な限界があります。


日銀保有ETFの活用論

日本銀行は金融緩和の一環としてETFを大量に購入してきました。含み益は巨額とされます。

日銀の剰余金は国庫納付金として国に納められます。近年は年間1〜2兆円規模で推移しています。ETFの売却を加速すれば納付金を増やせる可能性があります。

しかし、ここにも課題があります。

第一に、株式需給への影響です。売却ペースが速まれば、株価の下押し圧力になり得ます。

第二に、中央銀行の独立性です。政府の財源確保のために売却方針が左右されれば、金融政策の信認が揺らぎます。

第三に、一時的財源に過ぎない点です。含み益は売却すれば減少します。恒久財源にはなりません。


「隠れ補助金」見直しという選択肢

税外収入には限界があります。そこで浮上するのが、租税特別措置の見直しです。

研究開発税制や各種特例措置など、いわゆる政策減税は歳出と同様の効果を持ちながら、予算審議の透明性が相対的に低い側面があります。

補助金や基金残高の見直しも選択肢です。会計検査院の検査では、基金残高が20兆円規模に上るとの指摘もあります。

ただし、政治的なハードルは高いと考えられます。関係省庁や業界団体との調整は容易ではありません。


一時財源か、構造改革か

食品消費税ゼロは「2年間限定」とされています。であれば、一時的財源での対応も理論上は可能です。

しかし市場は、政策の一貫性と持続可能性を見ます。

・一時財源で恒常的減税を行っていないか
・金融政策と財政政策が混同されていないか
・円安依存型の財政運営ではないか

これらへの疑念が生じれば、金利上昇や通貨安を通じてコストが跳ね返る可能性があります。


結論

外為特会や日銀ETFは、数字だけを見れば魅力的な財源に映ります。しかし本質は、為替安定や金融政策という別目的の制度です。

減税財源の議論は、単なる資金調達の問題ではありません。財政規律、市場の信認、中央銀行の独立性といった制度基盤全体に関わります。

短期的な財源確保と、中長期的な制度の信頼性。そのバランスをどう取るのか。

減税の是非と同時に、その財源の質が問われています。


参考

・日本経済新聞 2026年2月21日朝刊「CheckPoint 減税財源、どう賄う? 外為特会・日銀ETFは難路」
・財務省「外国為替資金特別会計 令和6年度決算概要」
・日本銀行「令和6年度決算概要」
・会計検査院「令和5年度決算検査報告(基金に関する指摘)」

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