外来受診と処方の「適正化」 ― 医療現場と生活者の間で

FP

社会保障の持続性を確保するうえで、医療費の抑制は避けて通れません。その中でも注目されているのが「外来受診の適正化」と「処方の見直し」です。受診や投薬を減らせば医療費は下がりますが、現場には生活者の不安があり、医療提供者にも葛藤があります。制度改革の理想と現実の間を見つめてみましょう。

頻繁な通院に頼る安心感

日本の高齢者は、世界的に見ても外来受診の回数が多いといわれます。慢性疾患の薬をもらうため、月に何度も通院するケースも珍しくありません。
「先生に顔を見てもらうだけで安心できる」「診察が生活リズムの一部になっている」という声も多く、通院は医療行為以上の意味を持っています。
一方で、こうした「安心目的の受診」は医療費を押し上げる要因でもあります。厚生労働省のデータによれば、外来医療費は年間で約17兆円に達し、そのうち慢性疾患に関するものが大半を占めています。

医療現場の負担とジレンマ

医療従事者の立場から見ると、外来患者の多さは医師・看護師の負担につながっています。
診療報酬の仕組み上、短時間で多くの患者を診る構造が続き、「本当に診るべき重症患者への対応が難しくなる」との声も上がります。
「薬をもらうための通院が多すぎる」「一人に十分な説明時間を取れない」といった課題は、現場の疲弊を加速させています。

リフィル処方とデジタル化の可能性

こうした状況を改善する手段として注目されているのが「リフィル処方」です。一定期間、医師の再診なしに薬を繰り返し受け取れる仕組みで、2022年から導入が始まりました。
薬局での確認や体調変化のチェックを条件にすれば、通院回数を減らしつつ安全性も保てます。
また、電子処方箋やマイナ保険証を活用したデータ連携が進めば、重複投薬や服薬ミスを防ぎ、医療資源を効率的に活用できる可能性があります。

「効率化」と「人の温かさ」のはざまで

ただし、デジタル化や制度改革が進む一方で、「顔の見える医療が失われるのでは」という不安も根強くあります。
特に高齢の患者にとって、医師や薬剤師との会話は「健康の確認」であり「心の支え」でもあります。医療の効率化が進むほど、人との関わりをどう残すかが課題になります。
一方、医療側にも「人手不足の中で丁寧な診療を続けるのは限界に近い」という現実があります。効率化を進めることは、医療従事者の働き方を守る意味でも不可欠です。


結論

医療費の適正化は、単に数字を削ることではありません。受診の回数を減らすことが目的ではなく、「必要な医療を、必要な人に、適切な形で届ける」ことこそ本質です。
生活者の安心と、医療現場の持続性。この2つのバランスをどう取るかが、今後の制度設計の核心となります。
高市政権が進める社会保障改革が、この“現場の実感”に寄り添う形で進むのか――その歩みが問われています。


出典

・厚生労働省「社会保障審議会 医療保険部会」資料
・日本経済新聞「社会保障5つの論点」シリーズ(2025年11月)
・財務省「財政制度等審議会」資料
・日本医師会「外来医療の現状と課題」(2024年)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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